ちょっと変わった推理小説。
著者は「殿下シリーズ」で有名なラヴゼイ。
(「偽のデュー警部」も好き)

これまた著名な小説「ボートの三人男」になぞらえた事件を推理する。
三人の男。
そして舳先に立つ犬。
犬を連れてのボート遊びか…。
優雅じゃのぅ。

それだけではなく、この小説では、事件を捜査する刑事たちが、目撃者の女学生を伴って、これまた小説のように、ボートで現場検証する…。
河を上りながら…。

そもそも、お弁当をもって、白いパラソルを差して、のんびりと流れに乗って(勿論漕ぎ手の苦労もあるが)じっくりと時間を浪費するとは、なんとも暢気な。
いかにも英国的な遊びだ。

…と思ってはいけない。
いい時代だと思うべきである。
今、自分が出来ない環境だからといって、ひがんではいけないのである。

ところで。
「ボートの三人男」
は、以前読んだ「<食>で読むイギリス小説」にも紹介があり、大の男三人が、かんづめ一個に大騒ぎする顛末が妙に印象的だった。
もちろん、その裏には、彼らが缶詰を好むことや、食事の習慣等々で、そのクラス(階級)まで判ってしまうという、いかにも英国的な解説付きではあったが。

まあ兎も角、そのお陰で、いつかは読もうと思っていた小説であるのだが…こんなところにも出会いがあった。
偶然とは恐ろしいものである。

そして私は、本日「ボートの三人男」を買ってしまいましたとさ。

ちょいと次元を超えて、時間の追われる現代を捨てて、ゆったりと河くだりに出かける気分である。

ISBN:4150747210 文庫 三好 一美 早川書房 2004/10 ¥798

黄色い海岸

2005年2月26日 読書
ネットで見つけた、TONO氏の短編集。

この人の描く世界は、最後の最後の
"大どーんでんがえし!"
に、いつもあっけに取られる。

昔からこういうものを描いていたんだね。

そのくせ、面白さが減少してないところがいい。
通り過ぎる風が、"見える気になる"ところもいい。

ばかばかしいんだけど、ほほえましい…そんな話ばかりです。

ISBN:4257722363 文庫 TONO 朝日ソノラマ 2004/04 ¥580

雲を殺した男

2005年2月26日 読書
翠湖という、水の神に守られた土地を中心に、水と人間に関わるストーリーが綴られてゆく、その第2冊目。

きっと、著者もここまで続くとは思ってはいなかっただろう…というぐらい、衣裳がね…中国風なんだけど、時代がハチャメチャである。(著者も自覚しているが)
まあいいけど。

清朝風、つまりついこの間まで見られた中国服〜所謂チャイナ服と我々が呼ぶもの〜が一番多くて、髪型もやはりそう。

唐代風にしろとは言わないけど、衣裳も髪型も、個人的には周とか明とかが好きなので、なんとかならんか…と見るたび思う今日この頃である。

「水」というのは人の生命線である。
だから、水を得るために、人は命も賭けてしまう。
(本末転倒だが)

その行為を愚かと考えるか、美しいと映るか。

微妙なところである。

4編の話が収められているが、標題の「雲を殺した男」の、地震や地鳴りを、
「龍が寝返りをうった」
「龍が咳をした」
と表現するのは、流石にファンタジーだ、と感心したものである。

一番面白かったのは、荒れ狂う河の守をする一族の話を描いた「赤い旗」かな。
お魚さん♪

なんにしろ、この人のアイデアって奇抜。

ISBN:4834261727 コミック 今 市子 集英社 2005/02/25 ¥750

大月光浴

2005年2月25日 読書
月光に浮かび上がる、中国4千年の神秘…。

って、この人の映し出すものは中国の自然。
月の光だけで、人間の目に映るものと同じものを写し取ろうというお仕事は迫力が違う。

特に。
山。
山がいいね。

歴史ある場所はそれなりの建造物がそれなりに残っていて、とても素敵である。
けれど、山・水・空気、と自然がそのまま目の前に浮かびあがってくるのを、まさに今、見ているかのような錯覚が、とても気持ちよい。

朗々と詩を吟じてみたくもなるというものだ。
(私は詩吟はやったことがないが、知人が中国の白帝城で中国詩を吟じてきた。なかなかの評判だったらしい。)

中古書店で程よい値段(約半額)に落ちているので、とってもお買い得の一冊だった。

ISBN:4096805726 大型本 石川 賢治 小学館 1996/03 ¥3,875

ねこのばば

2005年2月23日 読書
「しゃばけ」がとにかく面白かったので、読んでみたかった一作。

化け猫、河童、小鬼にろくろっ首が表紙に一杯描かれていて、それだけでわくわくしてしまう。

今回は、どんな妖怪が登場するのだろうか。

ところで。
気のせいか、最近、本屋の店頭に「江戸モノ」が増えてきたような気も……。

読んでみて判る。
ねこのばば ⇒⇒ ネコのばーさん
その、示すとおりだった(笑)

ISBN:4104507032 単行本 畠中 恵 新潮社 2004/07/23 ¥1,365

さすが・流石!

2005年2月22日 読書
「英国大使の外交人生」は、外交官のお話だけあって、歴史の裏舞台がたくさん出てくる。
大正一桁生まれの著者が、10年ほど前に書いた本だけれど…年齢を感じさせない文体・話がとっても面白い。

そして、人生の大部分を海外で、ぎりぎりまで脳みそを絞って使ってこられた方だけあって、とても柔軟な考え方をしておられる。

少なくとも、じーさんの愚痴集「昔はよかった」ではない。
まったくない。

私ですら知っている歴史的事件の裏には著者がいる。
まさしく、歴史の裏には外交官がいる、というところか。

「外交官は自衛隊より危険な仕事」
というのは成る程、であった。
誘拐対象だし、テロ対象だし、未知の病気の蔓延している医者のいない国にだって赴任してゆくわけだし。

あ〜遣り甲斐は有りそうだけど、「志半ばで倒れ」ることも多そうな職業だなぁ。

チキタ★GUGU (5)

2005年2月21日 読書
久方ぶりに登場。
…新刊が出ているとはまったく知らなかった。

妖怪・オバケを扱う作家は数多いるけれど、TONO氏が描くこれらのものは、とっても怖くて愛らしい。

彼女は、"人間が生きる"ってことのリスクを、ちゃんとシビアに描くから怖い。
でも、ちゃんと"救い"が…。
いや、"希望"(かな?)が存在するから、好き。

妖怪に命を狙われている(100年育てて美味しく戴こうという趣旨らしい)のが本編の主人公にして稀代のエクソシスト、チキタ。

彼の周囲には怖い妖怪が恐ろしいオバケが、そしてそれよりずっと怖い人間どもが渦を巻いている。

そんな人間が、オバケが、妖怪が織り成す、おどろファンタジー弟5巻。

ISBN:4257905220 コミック TONO 朝日ソノラマ 2005/02/15 ¥800
亀の好きな外交官氏の二冊目を入手。
こちらは亀の話ではなく、外交官として生きた著者の、エッセイ的なもの…のようだ。

いい加減亀には参ったので、浮気してこちらに移行してしまった。

嫌、勿論、亀以外にもいろいろ登場予定の動物はあったようだけれどね。

なんか、こっちの方がずっと面白そうだったので…つい。

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昭和16年に外交官試験に合格し、仏蘭西への留学も決まっていたのに、勿論戦争ですべてパーである。

その後、占領軍の下ではまともな外交も出来ない。
平和条約を結ぶまでは、アジアも欧米も全部「敵地」だ。
大使館も公使館もおけるわけがなく、お情けでほそぼそと事務所を設置した程度…。

欧羅巴への赴任の旅も、貨物で2カ月がかり。
(普通の客船なら1ヶ月)
途中の寄港地では、もちろん上陸はできない。
(敵地だから)
シンガポールでは、レセプションに参加を拒否される。
(イギリス統治下だから)

そして何よりも。
戦後の貧しい食生活のため、日本人は皆、肉や魚はほとんど食べていない。
香港寄航中に甲板から見た、港湾労働者の白米が一杯のお弁当を見て、「ああ、あれだけ白いご飯が食べられたなら…」と羨ましく思った、というのだ。

  ………。

船中の豊かなバイキング料理(貨物船はスウェーデン船籍だった)をがっついて食べたため、蕁麻疹を発症した著者であった。
「しばらく野菜だけを食べなさい。」
そういわれて実行したら、綺麗に治ったという。

急激に栄養のよいものを取ったから、というのが理由。

  ………。

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このくだりを読んで、笑うと同時に当時の日本の貧しさが半端なものでないことを実感する。
(ちょっと涙ぐんでしまった)

私が産まれたのは、既に高度成長期の日本であったから、貧しい日本は実体験としては知らない。

戦後貧しかったことはなんとなく、常識的には理解できるのだが、1950年代であっても、日本国民はこれほどに貧しかったのか。
知らなかった。

だが。
1950年代といえば、高度成長期への足がかりと言うか、これから発展しようと言うその前段階である。
「追いつけ・追い越せ」
への第一歩が、いよいよ記されようという時代である。

叩きのめされ、打ちひしがれ、焼け野原となって何もなくなった日本が、戦後20年ほどで成し遂げた復興を、日本人自らも「奇跡」と呼ぶ、呼びたいと思う、その当事者の気持ちがわかるような気がした。

阪神大震災しかり。
寒風の中、身を寄せ合って路上に座る年配のご婦人がいった科白を覚えている。
「戦後のように、焼け野原から、もう一度やり直せばいい」
彼女はそういったのだ。
その力強い言葉は、日本の復興を成し遂げた彼女らの世代が持つ、強い自信ゆえに出るものだろう。
私たちの世代には、それだけの力も強さも自信も…多分、ない。

数ページを読んだだけでこれだけの驚きに出会えた本。
著者の描く50〜60年代の日本の外交。
復興へと駆け足で駆け上がる日本の姿を海外から、当時の"外国"を見聞する外交官の目で、語って見せてくれるのを楽しみにしている。

ISBN:4309010253 単行本 平原 毅 河出書房新社 1995/12 ¥2,548
「紅楼夢」を舞台にした探偵小説を読了。

人生、そうそう上手くはいかない、きびしーいものだということを再確認。

結局この物語は○○劇なんだよね。
でも、このストーリーから判断して、この作者の感情のはしっこが私とリンクしている部分を感じて嬉しかったな。

本編のストーリーには多分に不満が残ったので。

中国四大奇書ねぇ…「金瓶梅」を入れるのはどうかと思うけど…

昔、その内容を知らず、父親にこの本をねだって困らせた中学生の私でありました。
亀好きの外交官がつづる、マジな博物誌……。

何かで読んだ書評が面白くて、ネットの古本で捜して見つけたのだが…。
本気で博物誌をやっているよ、この人。

とりあえず、亀が好きなのだそうで、現在亀の講釈を聞いている。
いや、読んでいる。
紅楼夢の殺人事件と平行読みで。

なんで亀…なんて考えてはいけない。
これが歴史上の人物とか、故事とかに繋がってゆくらしいのだから。
中国大陸に棲む「しろいし亀」は日本では京都と沖縄に生息するのみ。
何故にか?

平安の昔、ミーハー貴族がものめずらしげに輸入でもしたのであろう。
ほら、このように歴史を感じることもできる。

ところで、亀の世界も外来種がのさばっているらしく、日本産のすっぽんは貴重すぎてお目にかかれないのだと。
では、やたらお高い薬用のすっぽんの血、とかすっぽんの○○とか、高級料亭で供されるものは、全部洋物だったのだろうか?

なんて、真面目に考え込んでいる自分が悲しかった。
なんですっぽん……。

あ。
ちなみに、すっぽんと言う亀は、欧羅巴には生息していないのだそうだ。
だから、ヨーロッパ人にはとーっても珍しいのだと言う。

ふぅ〜ん。


ISBN:4022559055 単行本 平原 毅 朝日新聞社 1988/09 ¥1,470

紅楼夢の殺人

2005年2月15日 読書
中国四大奇書…のひとつに「紅楼夢」という小説がある。

時は清朝。

建国の功臣…の家系であるか賈(か)家。
家のうちに池を持ち、その周りに亭を沖、あずまやを置き、美しい(縁者の)女たちを住まわせている。

彼女らと、賈家の人々(老いも若きも)との日常のあれこれ。
いかにも金持ちの生活らしい驚くべき描写。
日常離れした園遊会の様子や(なんと!)宮中にあがっている一族の娘のお里帰りのようす。
そして、政変に見舞われて「諸行無常」を感じるひと時…などなど、平和な清朝の、とある名家の生活描写を垣間見るのにちょうど良い小説なのである。

ちなみに、この小説は、中国の、庭園で有名な蘇州に現存する広大にして豪華な庭園・「拙政林」がモデルとなっている。
ここもとにかく広い。
観光客が大挙して押し寄せても、ゆったりと吸収するぐらい広い。
そこらのお寺より遥かに広いのである。
これが…個人宅であったとは。
貧富の差の激しさと、中国人民の怒りの原点を見る思いがする。

で。
この小説は、その「紅楼夢」のパロディである…と思う。
(まだ読み始めなので不明)

殺人事件が起こるのだろう(多分)
で、本編で主役を張った、賈 宝玉ぼっちゃんが活躍するのだろう(多分)

本編では、彼は父方のいとこである、病弱な美女・林 黛玉をふり、他の女に走ってしまった、
それも最後の最後に。
……私はそれがなんか許せなくて、このいかにも坊ちゃんな金持ちの苦労知らずの息子には、強い不信感を抱いているのであるが…やはり彼が探偵役なのだろうか?

どうせなら気風の良い王熙鳳あたりにやらせてくれても面白いだろうに。
とかなんとか。
部屋のベッドの上にかかっている額を見ながら思う私であった。

中国は杭州で求めたその絵は、シルク生地に描かれたもので、題材は「紅楼夢」。
美女がいーっぱい描かれているのだ。

ISBN:4163213708 単行本 芦辺 拓 文藝春秋 2004/05/26 ¥1,950

紅楼の悪夢

2005年2月14日 読書
唐王朝ますます盛んなりしころ。
場所は中国。

殺人事件か自殺か。

その年の状元(秀才)が、旅宿の離れ「紅堂楼」の密室で、喉を突いた死体で発見された。
惚れた女に相手にされず、思い余っての自殺か。
それとも…密室だけれど、殺人?

中国モノで推理モノっていうのは、描きにくいせいか、あまり見かけない。
面白いと思うんだけどね。
時代考証に脚をとられて滑ってしまうのかも知れない……。

だが、この著者は、アジア人ですらない。
しかも作品は40年以上も前のもの。

歓楽街の様子を生き生きと、そしてその地の習性と言うか人のありようというか、まったく文化の違うところで育った人でありながら、よくまぁここまで描けるなぁとちょっと感心した。(失礼)

さて。

探偵役は、狄仁傑。
県知事である。

てきじんけつ、と日本では読み。
ディーレンチェ、と彼の地では読む。
すなわち、ディー判事。

実在の人物なのであった。

ISBN:4150017522 単行本 Robert van Gulik 早川書房 2004/06/11 ¥1,050

幻月楼奇譚

2005年2月13日 読書
友人にレンタルしていたのをすっかり忘れていた。
このたび唐突に還ってきて、嗚呼、こんな本もあったな、と読み返している次第。
(8月に一度書いたけど…新しく出あった気分で感想文♪)

時は昭和初期…に果てしなく近い時代。
…って、いつや?

作者曰く。
時代考証苦手なので、何をかいても許される、すなわちなんでもありのファンタジーとして"許してね♪"
ということらしい。

時代が近過ぎると"史学"としては成立しない、という話は聞いているが、漫画も大変だな。
まだまだ"生き証人"がいる時代だから。

幇間というのは太鼓もちのこと。

お座敷を盛り上げる、男性のこと。
時代劇でもよく見かけるアレです。
"男芸者"ともいいます。

味噌屋の若だんなは、当時の常識としてお座敷遊びも日常として愉しんでいるのだが、そこで出会った"訳あり"の太鼓もち与三郎とねんごろになり(笑)幽霊がらみ・人情がらみ・財産相続がらみ・男女の愛憎がらみのさまざまな事件に直面する。
題して「昭和浪漫・お座敷事件簿」とはよくつけたものだとおもう。

人が日常のウサを晴らし、日常を忘れて遊ぶ"お座敷”なのだから、色んなものが溜まってゆくのは…当たり前かも。
今までお座敷に対しては、そういう見方はしたことがなかったけれど、確かに、"業"に深い場所だよねぇ。

神仏信仰を真面目にやるのは、当然なのかもしれない。

ISBN:4199602615 コミック 今 市子 徳間書店 2004/08/25 ¥560

黒蜘蛛島

2005年2月12日 読書
名前だけは聞いていた。
中味は読んだことがなかった。

今回友人に借りて…読む。

さすが田中芳樹氏。
早い早いぞ、とっとと読める。
話の展開もいい。
言葉遊び(会話など)も健在だが、冗長ではないので好感がもてる。

何も考えずに、楽しく、心健やかに読むにはちょうど良い。

氏の代表作である銀河英雄伝説は、第一巻の冒頭部分、宇宙前史の部分をのり越えられるか乗り越えられないかが、その物語を好きになるか見向きをしないかの別れ目になると言われたものだが、最近はそれほど重い分岐店は見当たらないようだ。

日本人(女性)離れしたヒロイン・薬師寺涼子。
ブラウンの髪にやたらながい脚……

大財閥のお嬢様で、キャリアで、格闘技の天才で、スタイルも顔も最高で……

そして今回の舞台は、カナダの西海岸だ。
仏蘭西の豪邸から、わざわざ(特殊仕様の)メイドを取り寄せ…呼び寄せてみたり、やることがいちいちお嬢様である。

そんなこんな、いかにも男性が描くスーパーヒロインだけど。

現実にこんなのいたら、蹴っ飛ばしてるかも。

天は二物も三物も与えず。
その言葉があるから皆、生きていけるわけだし(笑)

ISBN:433407541X 新書 田中 芳樹 光文社 2003/11/01 ¥820
米原万理氏の「真昼の星空」は、エッセイである。
エッセイだけど、笑うだけではなく、最後に七味のぴりぴりと効いた、"真実"が披露される。

今、日本で、明らかにおかしいと感じている事実、オブラートで包み隠された禁忌に、片足のつま先で触れるような語りが面白い。

「自由と言う名の不自由」では、

自由に書いていいといわれたこのエッセイが、どうにも主題が絞り込めず、イラストレーターにせっつかれた挙句、
「絵を先に描いて。その絵にあわせて原稿書くことにするから。」

その絵からテーマが産まれ、文章が産まれたのだと。

規則や規定や決まりごとに厳しく縛られ枠で囲まれたもののほうが、自己実現が出来る。
自由であればあるほど、"何か"は産まれにくい。すぐに行き詰ってしまう。

同じ様に、思想統制厳しかりし頃のロシア(ソ連邦)今の"自由"の旗の下にあるロシアを引き比べてもいる。
つまり、
お上が何を奇麗事を言おうとも、政府の使い走りであるマスコミが何を煽ろうとも、その裏を見つめる"目"をもっていたそれソ連邦時代。
自由になったがゆえに、マスコミに踊らされ、気がつけばテレビや新聞や雑誌の論評とまったく同じことを、さも自分の意見であるかのように思い、口にすることに何の抵抗も感じない今。
(だから一気にひとつの方向に突っ走る大きな流れが出現する)

さて。
どちらが、本当の"真実を見る目"を、"真実をかぎ分ける嗅覚"をもっていたのだろうか。

なるほど。
仕事で縛られている日常(平日)のほうが、自分の趣味に没頭しようという意気込みが大きい。
週末の休日などは、日ごろの疲れが出て、ごろごろと無為に時間を費やすのみで終わってしまう。
(それこそが休日の意味であり、正しい休日の過ごし方なのだが)

来日したとあるロシア女性が、"日本の男性"について述べたくだりで、電車やバスで席を譲らない(向こうでは常識)ことに憤慨したものの、しばらくの観察の後、仕方がないわね、と言ったのだそうだ。
「日本の男は働きすぎ。クタクタになって通勤する日本の男性に、電車の中で席を譲る余裕はないはね」

日本女性も同じことだ。

現実は、本当にシビアであるけれど。

月光浴

2005年2月8日 読書
本棚を整理してみたら、こういう本が出てきた。
写真集である。

久しぶりだ。
こんな美しい写真集を、そばに置いておいてすっかり忘れていたとは…。
不覚。

心癒されるのは、ぎんぎんと照りつけすべてを白日の下に晒してしまう太陽が存在しないから。

月の光のなか、ゆっくりと染み出してくる、自然の呼吸をも感じさせてくれるから。

「月光浴」と言う言葉が一斉を風靡して、この写真集も軒並み品切れ状態で、何軒も本屋を回ってやっと見つけた最後の一冊だった。
夜遅く。
街中の本屋で。
この一冊が私を待っていてくれたことを、今まざまざと思い出す。

もう10年以上も昔…。

早すぎる。
時間が早すぎる。

そんなに、死に向かって、急いでどうする。

数年前に誕生日プレゼントで貰った同名のDVD。
それもまた、静かな時間を共有してくれる大切な宝物である。

ISBN:4096805718 大型本 石川 賢治 小学館 1990/10 ¥3,570

真昼の星空

2005年2月7日 読書
たまたま立ち寄った本屋で、たまたま新刊コーナーに並べられていて見つけた。

グッドタイミング☆

著者はロシア語通訳者。
その辛らつであけすけで力のあるエッセイはとても楽しいのだ。

「真昼の月」はいかにも薄ぼんやりとして、力なく、頼りなく、今にも消え入りそうなイメージである。
では、「真昼の星空」はどうだろう。

女流詩人オリガ・ベルゴリツの自伝的エッセイ「昼の星」からその題名を貰い受けたのだ、と前書きにもある。

真昼の星。
太陽の厳しい光にさえぎられてみえないが、そこに必ず存在するもの。
存在することがわかっているもの。
だが、それも普通である我々の眼には見えないのだ。
決して。
そして、忘れ去られもする。

必ず、満天に散りばめられて存在する、星々。
普通の目には見えないものよ、それゆえにあたかも存在しないものよ!わたしを通して、わたしの魂の奥底の、もっと澄みきった薄暗がりを背にして、あらん限りの輝きを放ちながら万人の目に見えるものとなるがいい

普通にしていては見えないもの、当たり前と思っていては判らないもの、探求することを、そして想像することを忘れてしまったものには決して見えないものを、私も見つめたい。
そう在りたい。

忘れるのは人間の勝手であり、その存在がなくなる訳ではないのだからね。
それは常に、存在している。

…さて。
それでは、著者の楽しい旅に、同行させてもらうことに致しましょう。

しばしの夢を…そして、真昼の、満天の星々をたずねる旅です。

ISBN:4122044707 文庫 米原 万里 中央公論新社 2005/01 ¥620
チェルシー(1743)、ボウ(1744-76)、ダービー(1748)、ウースター(1751)、ウエッジウッド(1759)、スポード(1770)⇒コープランド(1833)、ミントン(1793)、ドルトン(1815)、ワイマン(1856)⇒シェリー(1929)、ロウヤルクラウンダービー(1876)

陶磁器だけでずらずらと並ぶこれらの名前は、好事家には大きな意味を持つ。
そし、こういうものを使うことこそが、英国では上流階級の証でもあった。

そのほかにも、

?胡瓜のサンドイッチに異常な執念を燃やす上流階級
 ⇒昼食とディナーの間に食べる軽食には、一番いいと考えられたのが、"胡瓜のサンドイッチ"だった。
だから、友人をお茶に招待しておきながら、それ(胡瓜のサンドイッチ)がない、と言うようなことは、到底許されざる事態であった。

?同様に、ディナーの時間は遅ければ遅いほど階級が上だと思い込んだ当時の英国人
 ⇒ディナーを8時や9時にとり、もっと遅い時間(11時ごろ)にはサパーと呼ばれるぶどう酒や軽食(おかゆなど)を食した。

……どうでもいいけど、こんな食生活で太らなかったのかな?

このように、「食」に関する振る舞いが、上流階級の優越感と自己顕示を満たす道具になっているとよくわかる。
が、同時にまったく逆の方向(合理的・経済的)に流れてゆくのが時と時代の常でもある。

一度に皿をどさっと並べ立てた当時の"コース料理"にかわって、ロシア式の"コース料理"が流行りだすのが19世紀半ばのこと。

つまり、今私たちが眼にし、理解している"コース料理"のことである。
スープに始まりサラダ、魚、肉……最後にデザートと、一品づつ供される食事のことだが、なんでこれが「合理的かつ経済的」かといえば、

?お代わりを許さない(笑)……う〜ん、とっても経済的ですね!
というか、お代わりしてたのか、やはり。
(気持ちはわかるが)

?一度に全部の皿が並ぶと、客はゆっくり時間を掛けてあっちの皿、こっちの皿、と味って食べる。
時には2〜3時間も掛けて。
一品づつ出てくるので、これが出来なくなった。……確かに、合理的だし、経済的でもある。

                       以上!

こういうことを踏まえることが出来れば、英国小説を読むのは、確かに数倍楽しくなるだろう。
たとえ"そのとき"には、ほとんど頭からすっとんでいたとしてもだ。(朦朧と覚えていればそれだけでも善し)

でも、日本人でよかったな、としみじみ思ってしまう逸話が多すぎるのも真実なのであった。

おれは直角 (1)

2005年2月5日 読書
私の持っているのが最初に出たコミックスだったので、レビューの画像にいささか驚いた。
そうだよね。
初版は昭和51年だもの。
30年近く前の話か。

小山ゆうといえば、「がんばれ元気」とか、他にもヒットを飛ばした漫画家なので、知らない人はいないだろう。
でも当時、この漫画が出たときは、さほど有名でもなかったのだ。

この作品がいかに衝撃を与えたか。
当時の教師すらこの漫画を読むことを進めたぐらいだったから、半端ではない。

漫画がメッセージをもっている。
笑い、悲しみ、共感するだけではなく、何を言いたいのかがはっきりしている。
笑いの中に、人間の優しさと、喜びとがたくさん詰っている。
社会が激変した現在、再び読んだとしても、なんの遜色もない。

そもそもこれは江戸時代の後半、長州藩の藩校・明倫館を中心にした話である。
勿論、長州藩も明倫館も実在した。

登場するのは、侍の子供たち。
ゆくゆくは藩の中核となって重責を担う立場に立つはずの、身分の高い武士の子弟…のなかで、身分も低く、やることも桁外れの主人公が活躍するという物語である。

社会の約束事はいつの時代にもあって、姿を変えているだけで厳然と存在している。
その約束事を、悪いことは悪いのだと、改革すべきは改革すべきであると、それを小難しい理屈ではなく行動で顕わすのが主人公である。
今、学校という社会でも、大人の社会でも、そこまで行動できる人間がいるだろうか。
当時はいただろうか。

そこにこの漫画の魅力はある。
笑いながら社会を変えてゆける。
それは素晴らしいことだ。

「どんな時でも、笑いはいつも人を明るくする」
どんな絶望も、笑いが吹き飛ばすのだ。

真理だね。

ISBN:4091930115 文庫 小山 ゆう 小学館 1996/12 ¥610
「まだ読んでなかったっけ?」
という間の抜けた科白とともに、つい先ほど妹が差し出した一冊。
「うん。まだ読んでないよ。読んでない。読んでないったら読んでないよなぁ…」
と受け取った私。
ひと月以上たってから思い出すか。
ホンマ。

相変わらずぶっ飛んでいるようで、楽しみである。
そろそろ"引っ張り"も程ほどにして、決着をつけて欲しいことがひとつふたつみっつ…。
あるけれどね。

心なしか本が薄いように思うのは、私の気のせいであろう。
きっと。

ISBN:4044452148 文庫 松本 テマリ 角川書店 2004/12/25 ¥460

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