楽毅〈第4巻〉

2005年10月23日 読書
シリーズの最終巻。

中山国は滅んだ。
趙の執拗な攻撃の前に。
中山王は西辺の一邑を与えられ、最後まで死命を尽くして戦った遺臣たちは全国に散った。

ひとつの国が滅ぶ。
歴史上、数え切れないほどの国が滅んでいったのは確かだが、そのひとつひとつにその国を支えようとした人々がいたことを思うとき、国の滅亡、というものは、決して軽いものではないということが分かる。
どんな小さな国であってもだ。

さて。
ちっぽけな極東の国は大丈夫だろうか?

さて。
楽毅はどうするか…?

妻子と数名の部下を引き連れて邯鄲(趙の首都)へ。
そこで待っていたのは、仇敵からの仕官の誘い。
ところが、運命は皮肉である。
趙は前王(武霊王)と前皇太子、現王(恵文王)の間に生まれた愛情のゆがみが権力闘争に火をつけた。

中山国を完膚なきまでに叩き潰した趙の武霊王は、その恨みによって悲惨な死を遂げた。
中国統一に夢を翔けさせていた彼の王の、あまりにも悲惨な最期であった。

しかも下手人は実の息子だし…。

子供には、等しく愛情を注ぐべき。
また、執政者たるものは、世に広く賢人を求めるべき。
等々…学ぶことは多い。

楽毅が敬愛する斉の国の孟嘗君があちこちにちらちらと姿を現す。
孟嘗君贔屓の私はそれがとっても嬉しい。

ISBN:410400409X 単行本 宮城谷 昌光 新潮社 1999/10 ¥1,995
著者は日本で最初の写真評論家である。
(と解説にある)

アサヒグラフやその他に寄稿された彼の文章をは、50年前、古いものでは70年から前のものであるから、著者が生きた時代がどういう時代であったかは分かるはずだ。
戦後直後のこと、戦前のこと、高度成長期のころのこと。
多岐にわたって出てくる。

著者は1898(明治31)年に愛媛県・松山市に生まれた。
裕福であった家の子である。でなければ、写真だの東京帝大とはいえ美術史学科だのに"うつけて"はおれなかっただろう。ちょっと…いや、かなり羨ましい(笑)

「写真に帰れ」とは、
古い芸術写真とは訣別すること。
写真の機能性を認識し、写真の機能としての社会性を重視せよ。

これは当時サロン写真だの芸術写真だのの一方向へ偏って走っていた写真世界に対する警句であるという。

正直に言えば。
最初の「写真性と反写真性」、「写真論の黎明」あたりはすっとばした。
流し読みである。
ごめんなさい。
観念的過ぎて、抽象的過ぎて、よくわからない、というのが私の本音だ。(笑)

その後の、たくさんの写真家たちの話に移ると、俄然面白くなって来たのだからその辺は許していただこう。
女性を撮るから、裸婦を撮るからと、それだけで「女好き」と言われた写真かもいたという。
あんまりだ(笑)
なんだか可哀想…。
さて、本文中に引用された文章で気に入ったところを孫引きしておく。
確かに日本の仏教美術の様式は、朝鮮中国などから伝承している。だからといって、日本の仏教美術が、朝鮮、中国のイミテーションにすぎないとするのは、あまりに皮相な、形式的な見方である。たとえ形式は彼に借りているとしても、内にこめる精神は我のものであり、しかもその深さにおいては、比較にならない。
…物を対象としても、事柄を踏まえないかぎり、深い写真は撮れない。逆に事柄を対象としても、物を踏まえない限り、力強い写真はできない。物を対象として、事柄を踏まえないと、ただ物々(ものもの)した写真になる。…物を物として撮るだけなら記録する手段としてのカメラ・メカニズムだけでこと足りる。(「撮りつづけた日本の心−土門拳の抵抗精神」より)

また構図にしても、古い絵画の構図にしたがわなければならないとされていました。例えば、水平線は曲がっていてはいけない。それは画面の中央にきてはいけない。画面の上部または下部の三分の一くらいのところになければならない。前方にも何も無い平面があってはいけない。画面の縁と平行に主要な線が在ってはならない…(「写真的表現の特質について」より)

ちょっと吃驚…でも、実際には私自身も、たくさんの写真を見て、目が肥えているつもりでそういう制約に縛られているのかもしれない。
…と、ちょっと思った。

ひとつの"写真"が話題になれば、それはすぐさまブームになって、次のコンクールにはそのような写真が氾濫する。
著者が苦い口調で批判する。
それは、かの時代から半世紀たった今でも、いえることだと思うからだ。

あーでも。
「写真は自分が楽しむだけのものであってはならない」
は、非常に難しいです、先生!
アマチュアカメラマンも、写真の向上のために何かを胸に秘めて目標を決めて上昇志向で…とか言われても〜〜困ります〜。

だって。
カメラが大好きな日本人。
老若男女おしなべて、カメラ好き。
日本人!といえば外国人でも"カメラだ!"と叫ぶほどなのに、それほどなのに、やっぱり「自分が楽しむために」写真を撮っているのだし。
いつもコンクールで批判されようとか、それによって内面を上昇・昇華させようとか、そんな大それた事を考えている人って皆無とは言わないけど少ないと思います…。
そう思えます。
使い捨てカメラを抱えてパシャパシャやってるおばちゃんとか…見てたら…ね?
だからそんな難しいことを…50年も前に言われても〜〜〜(笑)

ISBN:4582231144 単行本 大島 洋 平凡社 2005/10 ¥2,940
バンダル・アード=ケナード(アード・ケナード隊…とでも訳すか?)の隊長であるジア・シャリースが、ラジンケムののっぱらで死体と一緒に転がっていた(死んでいたのではなく、負傷していたのだが)までのいきさつ+α を描く、シリーズの第2作目。

や〜ここまで嵌まるとは。
自分でも思わなかった。

エルディル(白い雌狼)を拾うところ、異国の青年を拾う…じゃなくて、傭兵隊の新入りとして迎えるところ、街でうだうだ過ごしつつばかな正規軍兵士と阿呆な指揮官のお守りに溜息をついているところ…
など、傭兵稼業の辛さ(笑)がよく描かれていて面白い。

いや…ほとんどボケと突っ込みの世界ですわ。

傭兵隊、その名も高き、バンダル・アード=ケナードの中味。
誰がいてどんな性格でどんな雰囲気か。
そういうことがよく分かる。

1作目でドクター・ヴァルベイドと出会い、あっちへこっちへとバンダル・アード=ケナードを探しつつ、後一歩のところでかわされつつ、追っ手に追われつつ(かたや賞金首、かたや遺族に"人殺し"と冤罪をきせられ)…スリルとサスペンスのむさい男二人の逃避行も面白かったけれど、いきいきしているのはやっぱりこちらか…。

一番可愛いのはエルディルだけど。

ISBN:4125008612 新書 駒崎 優 中央公論新社 2004/07 ¥945

吼えろペン 8〜10

2005年10月20日 読書
新吼えろペン 1 (1) 10月20日 TrackBack
またまた救いの手が伸びて、お借りできた、迫力満点"元気の出る"コミックだ。
笑える!
"漫画家"を描いた作品で、よくもまぁこれだけ長く、面白く持続させてゆくものだとほとほと感心する。

今回は8巻から10巻までの3冊を読む。
レビューが出たほうが絶対(!)楽しいのにな〜残念。

迫力、というか怨念と言うか執念と言うか(笑)
とうとう仮面の編集者(ゴメン、読んでないと分からないネタだわ)に足下に踏みつけにされる主人公之図……と、なんと作者の写真!

とことんやるよな、この人は。

いや。流石です。
是だけの熱い漫画家漫画を描くだけのことはあると感服いたします。

しかし…

いつかは自分の所の戦力にしようと漫画家スクールへ講師として出向いたり。
イベント会場で隣席の漫画家とサインに絵を描く描かないで密かに争ってみたり。

本気でそんなことをしているなら、漫画家って……(絶句)

人の1か月分を1週間で使い果たす漫画家は、1ヶ月の休みでも1年間仕事をしてないように感じてしまう、だなんて。
そこは同情しました。
そこだけは。

あーでも、サラリーマンは10日も休んだら、自分の首を心配してびくびくして暮らすだろうなぁ。
どっちがいいのか…究極の選択?

ISBN:4091570283 コミック 島本 和彦 小学館 2003/07/19 ¥560
赤・黄・紫・茶・黒・朱・白銀…そして今度は藍色。

青は藍より出でて藍より青し。
という格言がある。
弟子が師を越えちゃったことを言うのだが、藍は青には勝てない…負けちゃうってことか。
(青って誰だ…?)

妖しい病気が流行っている。
ヒロインの同僚、月影がそのむかし、暮らした村を愛する人々を僅か2ヶ月ほどの間に皆失うことになった、奇病である。
まだ最初の40ページほどだが、どうやら今回は、彼の過去に迫る話のようだ…と推測する。

二重人格(?)の彼。
言動に  謎がありすぎる彼。

そろそろその謎のベールもはがしてゆかないと読者が飽きて離れてしまう…彼から、そして物語そのものからも。

そんな計算をしているのかどうかは知らないが、艱難辛苦の官僚生活を送るヒロイン・秀麗。
彼女の周りには常に超絶美形がうろうろと…うろうろとしすぎだ。
後しがらみがありすぎるというか…。
とにかくうっとおしい…!(笑)
もうちょっと、人間関係を整理しませんか?

超絶美形ゆえにそのエピソードが長々と語られる(でないとファンは許さない)…ゆえに、本筋が流れ流れてわけわからんよーになってしまうやないの!

女心としては、あたかも現世のジャ○ーズのように、「選り取りみどり」状態は天国〜♪なんだろうけれど。
さて、最終的にはどうするか。
どう始末をつけるか作者。

女心…だけつきつめて現実的な頭で判断すれば、やっぱ主上なのか?
愛する!というよりも、愛されてる!という感覚が一番強い、激しいと感じるから。

あーでも、皇后になったらなったでその立場(位置)の始末は如何するんだろ?
後宮で寵愛争いをするヒロインの図、なんて見たくもないし、かといって皇后が政治に口を出すと、大抵社稷は傾くもんだし……う〜、む。

…可哀想にな…劉くんは。

昔々の中国では、皇太子を決めたらその生母は殺したもんだった。
なぜなら、君主の母として、勢力振るい放題、その親族も好きなことし放題、ってことになるから、わざとその縁をたたっ切ったのだ。
あんまりだよな。
でも、それでも「わが子を王に」と、寵愛を得んとする女性は多かったのだ。

その"悪習"が改められた後は、やはりわが子を、わが甥を至上の地位につけた皇后の親族は、王朝の屋台骨が揺らぐまで専横を極めたわけである。

いたしかゆし。
どっちがどうとは言えんわね。

ISBN:404449908X 文庫 雪乃 紗衣 角川書店 2005/09/30 ¥480
「ベラム館の亡霊」読了。

カツンカツンと呪いの館に響く音。
失った子供を捜す足跡。
埋められた子供を壁から掘り出す音。

その実体は…!

人間関係といい、事件の裏話といい、よくまぁこれだけ複雑に糸を張り巡らし、こんがらかりもさせずにきちんと解決口を与え、理屈に一点の曇りなく(神秘主義的なところはよく分からなかったが、西洋宗教の話になると、我々東洋人には歯が立たない…ので、こんなものではないだろうか?)最後は見事にといてみせる。
しかも、無駄が無い!(登場人物も事件にも!)

や〜どきどきしたなぁ。
見せ場が上手な作家だと思う。

パイプぷかぷかのおばーちゃん、なかなかいい味です。

それにしても不老不死…。
そんなにしてまで追い求めるものなのか。

寿命が無くなれば、人間は良心が無くなる。
だから、神も不要になる。

理屈だろうが、それだけで人は生きられない。
なぜなら人には心があるからだ。

作中人物の科白、
愛は神々しい人の姿をしている
というのは、つまりそういうことなのではないだろうか。

面白かったです。

メイプル戦記

2005年10月18日 読書
女の子だって野球が好き。
プロとして野球をやりたい。
…そう思ってもおかしくない。
実際、戦後すぐごろ(?)には女子野球チームも実在した。
否、アメリカではなく、ちゃんと日本の話だ。

タイガースが勝ち。
ロッテが勝って野球が盛り上がっている。
ふと触発されて古いコミックスを取り出した。

最後まで諦めない!
最後まで夢を追おう!
そんな気持ちの、でもそこは女の子だからぎらぎらした闘志ではなく、やさしい思いと希望に満ちた物語である。

ちなみに、セ・パの各球団をもじったチームが活躍する。
メイプルスは北海道のコロボックル・ドーム球場を本拠とする(当時は日ハムは東京ドームが本拠;ジャイアンツと交代で使いあっていたのだ)セ・リーグの7番目のチームである。

球界の紳士たれ、をモットーとする、東京タイタンズ。
大阪のあっさり・すっきり・うっかり・さっぱり・さらり・さばさばな大阪ジャガーズ(笑)
ピンチになると客席からういろうときしめんが飛ぶ名古屋グリフィンズ(しかも監督は仙ちゃんもどきだし…)
ほか。
(パ・リーグは省略。ごめん)

選手の名前も当時活躍していた選手のもじり、なので…先輩風を吹かせる恐妻家の落葉井選手とか、立浪選手、ジャガーズの兎山選手に山羊選手、親庄選手。
タイタンズには原槙選手なんてのもいるし。

時代がよくわかってそれもまた楽し。

合言葉は、
「目指せ!年俸1億円!」(笑)

ISBN:4592123611 新書 川原 泉 白泉社 1992/12 ¥410

亡霊…

2005年10月17日 読書
亡霊…
まず最初に一発!

でもって、本題に入る。

いいところでまた…幽霊話だ。

いや、フォントとか字体とかえてあるから、それにまさかそんなことぐらいでストーリーが混乱したりはしないけど、そこそこ話が進んでから、挿入してくれないかな?
怪談はさー。

はっきり言って本筋の展開がまだまだだから、どうしても楽しい♪わくわく♪…の怪談に身を乗り出してしまうのだよー。

西洋の教会って、聖なる、清められた場所…というわりに血なまぐさいよな。
と最近ふと思った。

いや。
日本のお寺だってそこそこ妖しいけど、こっちはたぬきとか狐が化けてる雰囲気だし。
…かわいい?

そう思うと、神社っていう場所は絶対に不浄の物はいれない。
あの真っ赤な鳥居(あ、まっかとは限らないのか。つい平安神宮や伏見稲荷を思い出して…)がでんっ!と鎮座ましまして、結界を守っているのだねぇ…。
あそこには妖しいものは、そういやいないんだっけ?
(最近の傾向としては、そこに住んでいる陰陽師とか神主とか、そっち系の人の方が怪しかったか…)

                ーベラム館の亡霊ー

ベラム館の亡霊

2005年10月16日 読書
どうして題名「ベラム館の亡霊」で出ないのだろうか?(作家名で出た)
呪われているのか…?

久々の洋物!
これも親切な友人からのレンタル品である。
最近本を変えないから…友人たちの親切が身につまされる秋であるなぁ。

最初の出だしは恐怖小説。
17世紀に生きた一人の尼僧が、恨みによってさまよえる亡霊と成った。
その恨みの元である赤ん坊…の死体が、館の秘密の部屋の壁から出てくる。
しかも、今埋め込まれたかのように、恨めしげな表情を見極められるほどリアルな姿で。
そして目の前で、砂と化し崩れ落ちるのだ。

…古い館の壁には死体が埋め込まれている。
というのは、西洋のホラーの定番だ。
昔の殺人事件を隠すため、とか、リンチの犠牲者を成仏させないため、とか。

日本で言うなら桜の木の下には…って感じかな?
情緒的には日本が勝っているような気もするが…そういう問題ではない?

まだ読み始めたばかりだが、カルト教団の教主だとか、黒魔術師だとか、本のカバー裏を見ると楽しそうな人たちの紹介が有るので、とても楽しみだ。
(無責任にこういうことを言っていると、自分がその世界に引き込まれてひどい目に遭う…というストーリーもありがち。トワイライトゾーンっぽいけどね。)

ISBN:404266802X 文庫 羽田 詩津子 角川書店 1999/09 ¥1,050

英雄とは

2005年10月16日 読書
英雄とは
金庸氏の描く小説の世界。

単なる読んで楽しい見てスカッとする、だけではなく、いろいろな意味を含んでいるのだった。
あまりのテンポのよさと展開の荒唐無稽さに目を奪われてそんなことにすら気がつかなかった。
粗忽ものだ。

毛沢東。
中華人民共和国を作った英雄。
同時に、数え切れない人を殺した人間、である。

英雄は、人を殺してなんぼ、なのか。
死んだ一人の人間に必要な土地はどれだけなのか。
それ以上の広大な土地を多くの人命と引き換えに奪い取る。
多くの人を殺して、果たしてそれが英雄なのか?

一人殺せば悪人だが、百万殺せば英雄。
とは、昔からよく言う科白だが。

金庸氏の視点がどこにあったのか、小説のラスト、そして後書きにいたってようやく理解した。

圧制に苦しむ人民に、疑問を感じる一般人に受けるはずだ、彼の小説は。

だが、それだけの中国人が、嘗ての絶対支配者にそういう思いを抱いているのかと、それもすぐには信じられなかった。
わき目もふらずに信奉している、というかんじだったからなぁ。
以前の中国は。
国慶節の北京の人民広場とか、5月4日の毛沢東祈念堂の前とか。
そりゃすごいのなんの!

だからこそ、対日暴動を抑えられなかったのか。
情けないのぅ。
…って思ったら駄目?
堂々の完結編!

文庫本で5巻は、多かったのか少なかったのか…登場人物のバラエティと数を考えると少ないような気もする。

武侠小説だからいろいろな武術が出てきて楽しめるが、それと同じぐらい、実は、恋愛や親子の情愛も描かれる。
…中国4千年だから、時々ちょっとだけ、私らの感覚とはずれてる気はするけど。

モンゴルの英雄チンギスハーンも再登場。
舞台は西域にまで及んで、作者の心に描かれる物語の世界の、稀有壮大さを思い知る。

中国って…
中国人って…
やっぱり(普通の)人間じゃないよなー

と、最後にはその思いを新たにするばかりであった。

ISBN:4198923159 文庫 岡崎 由美 徳間書店 2005/10 ¥840

楽毅〈第3巻〉

2005年10月15日 読書
王が死に、太子が即位する。
十重二十重に敵軍に囲まれた、瀕死の王都でのことだ。

そして王孫は、南東の地に楽毅とともに戦って新たな城市を得、太子となった。
王都が陥落する寸前のことであった。

寸断された国土。
王都の陥落。
再び、王の死。
驕り高ぶってきた小国は、この期に及んでも諸国の同情も哀れみも得られずにいる。

中山国の未来は閉塞しているように思える。
その中で、楽毅に従う中山の人々は諦めない。
楽毅を信じて戦うことで、未来への希望を繋ぎとめようとしている。

滅びに向かう国の運命は砂時計の砂よりも速く時を早く刻むものである。
落ちて行く…そう。
まさに、堕ちて行くのだ。
とどまるところを知らないのは、なにも鴨川の水だけではない。

そんな経験はしたくないものだ。

歴史に学び。
歴史を視ることで、未来を視ることができる。
「歴史を学ぶ」
と言う言葉の意味は、本来そういうことなのである。

丸暗記することではない。

その言葉がこの作中にも出てきてほっとする。
己の考えを力強く後押しされた気分なのである。

決して、自身のパフォーマンスのために過去の出来事や先人の知恵を利用(悪用)するべきではない…ってことを、だれかさんはいい加減気がつくべきである。
みっともないったら……。

そのうち、用法を間違うぞ……。
あーもう遅いか。
ISBN:4104004081 単行本 宮城谷 昌光 新潮社 1998/10 ¥1,890

楽毅〈第2巻〉

2005年10月11日 読書
読む本がなくなったので、またしてもここに戻る……。

なんとなくの記憶で辿る。
おっと、父上亡くなってましたか…!
トップに立つものが阿呆やと、下はやる気をなくすという典型的な例が、彼の時代の中山国だ。

トップが酷薄な性格で祭りごとを行えば、民はついてこない。
いつでも、なにをやっても、バカな民衆は神輿を揚げている物だ、という思い込みをしているものが、支え手をなくし地面にたたきつけられて骨の二、三本も折ってみてようやく気がつく。

気がついたときには遅いけど。
国敗れて、あるは山河のみ。

これはつまり、国でなくても企業であっても同じことが言えたりするわけですわ。

滅んでゆく国の歴史に悲哀を感じつつ…
ちょっと待てよ、なんか聞いたことがないか、見たことがないか、もしかして自分のところ(国)に似てないか?
なんて疑問を抱き始めたら。

もうかなり危ない。
そう思いませんか?

その時。
ここまで必死に国のために戦おうと、最後まで愛そうと奮闘する人間がどれだけいるだろうか?
どれだけ育てられるだろうか?
それがその国の、本当の力だと思うのだが。

ISBN:4104004073 単行本 宮城谷 昌光 新潮社 1997/09 ¥1,890
待望の新作!

……というか。
雑誌の連載ではなく、雑誌におまけについていたポケットブックス的なものをまとめたもの。
でも、3冊で単行本1冊が出来てしまうのね……とびっくり。
ポケットブックスを読んでいるだけでは、そんなページ数には思えなかったけど。

結構面白いし、この人の絵は昔から変わらず綺麗で安定感もあるので、うんと続けて欲しいです。
(前作の「彼方から」もスケールの大きなファンタジー・ロールプレイング・ゲームのようだったし。)

さて、物語の舞台は、室町中期。
戦国時代突入まで秒読み態勢のためか、各地でお家騒動だの妖怪がらみの陰謀だの妖しい陰陽師だのが活躍(?)し始めている頃だ。

田舎の尼寺に預けられている主人公・"鈴音(すず)"はみなしごの少女だが、幼い頃に出会った、通称"ととさま"(やはり幼い頃に死別、しているらしい)を生きるよすがとして毎日を暮らしている。
彼女はふつーの女の子、のはずなのだが、実は……陰陽術の素養がたっぷりある。
おまけに、それらをちゃんと制御するほどの力はまだない。
だから困ったものなのだが。

彼女と、悪役術者との戦いの末に死んだ(らしい?)"ととさま"が遺した"鳴らない笛"(穴がないからなるわけない)に宿る、不思議な妖かしが、隣国のお家騒動に巻き込まれて展開する昔物語風アクション・ストーリー(だってやたらでかくて醜い鬼がでてきて戦うんだもんな)である。

この笛に宿る、やたら滅多ら強力な妖かし。
竹に因縁のある"狐さん"らしく、霊験あらたかなる某寺の某僧侶に曰く、
「飯綱(いづな)狐」
ではないかと。

お公家言葉を使う超妖かしが記憶をなくしたがために、ドサクサ紛れに、すずに仮りの名を与えられて無理やり使役されてしまう羽目になるのだが、姿と言葉がすっかり公家風なので、与えられた名前がなんと、
「おじゃるさま」であるという……本人(?)曰く、
なさけのうて足の力も抜けておじゃります

だそうだ。

作者の後書きによると、このおじゃる様のモデルは、「柳生一族の陰謀」にでていた、公家(風)の剣豪だと言うことだが…有名なドラマだけど見てなかったんだよなー、私。
千葉真一とか志保美悦子とか…活躍していたんだよね、確か。

ISBN:4592183215 コミック ひかわ きょうこ 白泉社 2005/10/05 ¥410
タイガースのリーグ優勝から一週間余が過ぎて、ようやく落ち着いたというか。
2年前の優勝時に出た本を読み返してみる。

仙ちゃんは大変だった…。
あんな低迷球団を「なんとかしてくれ」「たすけてくれ」と泣きつかれては、「よし、なんとかしてやる」と答えるしかないのだから。

高血圧に不整脈。

本当にしんどかったんだな、大変だったんだな、と今、思う。
巨人の監督引き受けなくってよかったよ。

私の本音としては「行っちゃいや」だったが、男気の強い仙ちゃんのこと、「助けてくれといわれて見捨てられない」と言い出したら止められない、「仕方がないよね」とも思っていたのだ。

マジでぷっつん行ってたかもよ。
あぶないあぶない。
自分の命を一番に、大事にして欲しい。
(阪神ファンの言えた義理ではないか…)

彼の厳しい言葉を受け入れたオーナー・社長もたいしたものだと思う。

実るほど頭を垂れる稲穂かな。

実際、本当に、そうであると私も知っているが。
中途半端なヤツほど他人に威張りたがる。
他人に嫌がらせをして自分の権力を試そうとする。

だから、本当に真摯に耳を傾けたんだな…と。


人間だもの、夢は見る。

夢は見たい。

だけど…夢を見ない振りをする。
振りをしなければ、やってられない。
そんな苦しい毎日だった。

だから、夢を叶えてくれた仙ちゃんに、心から感謝する。

あの時は、涙が出そうになった。
本を読んでも、また、なきそうになるかもしれない。

もう一度、泣きたいね。
日本一のフラッグを手にして。

ISBN:4048838512 単行本 星野 仙一 角川書店 2003/10/03 ¥1,365
環境考古学…つまり、トイレとかゴミ捨て場なんかに残っているモノから、当時の人が何を食っていたかがわかる。

食生活が分かれば、文明の程度も分かる。

大型魚をとっていたなら網をつかっていたな、とか。
沖合いにしかいない魚だったら舟を使っていたな、とか。
獣を食べていたなら、既に家畜をもっていた、とか。

まぁいろいろ…分かる。
分からなくてもいいことまで分かってしまった。

平安時代の貴族の生活…霞がたなびく(これは屏風絵などの影響)優雅な屋敷生活。
だ〜が、しかし!
垂れ流し、だったそうだ。
溝があって、とのもひめも使用人も。
それが市街地を流れてゆく〜。

近世のパリもええかげん汚い街だったというが、それに比するのではなかろうか?
ま、石じゃなくて土で出来てる都だからまだマシ(?)だったかもしれないが。

優雅な平安貴族…牛車で優雅に外出…しないと、とんでもないものが裾についたりにおったりするからなのかも知れませんなぁ。

それと。
縄文人が豚を飼育していたか否かの問題で、フィリピンじゃ今でも半野性半飼育状態だとフィールドワークしているくだりがある。
囲いもなく、小屋もなく、勝手に豚が村に来て餌を食べてる。
何しろ探さなくても、ここに来れば餌があるから、入り浸るのだ。
適当な大きさになればその中から潰して食べるという。

縄文人もこういう形態で飼ってたかも知れない、と言う話。
……フィリピンの田舎までいかんでも。
と私は思った。

何故なら。
お隣中国で、街中で勝手に餌をあさって歩き回る豚を私は見たからだ。
大同市郊外で、小雨の振る中だった。
野菜を積んだリヤカーを見過ごしていた時、足元でなにやら蠢く黒い物体に気がついた私。
なんと、豚!
道にこぼれた野菜くずをおって、町の真ん中の道路を堂々と歩いて行かれたのだった。

な〜んにも繋いでない。
首輪もしてない。

あれって、飼い豚?
犬も食用になっていた、というのは今更吃驚する事実ではない。
母の田舎では「赤犬は冷え症に効く」と言われていた。
普段は狩りの相棒で、飢饉になったらご飯にしてしまうなんて、なんて一挙両得…って、今の愛犬家には考えられないだろうね。

ところで、獣の肉を食べるなんて!
と鎖国時代の日本人は言っていたはずだが、意外に食べていたらしい。
肉を。
それも馬や猪だけでなく、鼠とか〜犬とか〜まで。
とある藩のご重役の屋敷跡から"遺産"が発掘されているらしい。
(鼠と聞いて驚くなかれ。某英国海軍では、孤立した軍艦のなかの貴重な蛋白源だったのだから。食糧不足のときは乗務員の間で高値で売買されたらしい。さしずめネズミ・オークションってやつだな。)

流石に「なまもの食い」は恥ずかしくて、庭などに埋めて隠したらしい…。
幕末の異人さんを「獣の肉を食う!」とか言って攘夷の対象にしたのは、あれはなんだったんだろう…?
きっと、庶民だけなんだね…肉の味を知らずに損をしていたのは。

言うこととやる事が違うのは、特に為政者にその傾向があるのは、昔からのことらしい。

ところで、犬はただ単に使われて食われていただけではない。
平安時代の絵巻物にもあるように、飢饉・疫病・貧困などでまともに死体の始末が出来ない時、死体は彼らのご馳走になっていたのだ。
普通の死体はまあ…疫病はさすがにまずいんじゃないかと思うが…そういう問題でもないか。

思うに人間と犬は、表向きは和気藹々と中がよさそうに見えて、その実千年以上の昔から、"喰うか喰われるか"の戦いを戦ってきたのだなぁと感慨を深くしたのである。

「環境考古学への招待ー発掘からわかる食・トイレ・戦争ー」より
意外な伏兵!
考えてなかったのに、身構えていなかったのに出ちゃった新刊だ。
…にしても、流行っているのか?
CD化?

頼んで買ってきてもらった本なんだが、この本だけ5冊ほど平積みになっていたという…。
つまりほかの本が並べてもらえたかもしれない4冊分のスペースを、こいつが占領していたわけである。
おそるべし…
いや。
面白いよ。
面白いから、私も買ってるんだけど。
なんかいきなりじゃない?

二枚目ではない拝み屋さんたちが活躍する、稀有な漫画だもんなぁ〜。
おまけに三人とも爺さんだし。(三爺という)

神父。
神主。
陰陽師。

いいとこ、おさえてるよな。

爺といって馬鹿には出来ない。
元とは言え、皆"拝み屋"としてそれなりの成果を上げてきた人たちなのだ。
たとえ"立入り禁止"だとか"危険!近寄るな!"だとか、近所のフツーの人たちに言われていようとも。
最強のタックル(?)で今日もかわいそうな霊体を虐めに(?)行くのだった…。
逆襲されたりして…。

ところで、主役(多分…)の少年(高校生)はまったく霊感がない。
な〜んにも見えない。

拝み屋横丁に住むものは、たとえフツーの小説家であろうとも、皆霊感が異様に発達しているはずなのに…。
そのあたりがこの漫画の醍醐味でもあるのだが。

そこで、自身に省みて、霊感があったほうよいか、ない方がよいのかなどと、色々と考えてしまう。
私も、まったくない人間だ。
霊感も霊障も、な〜んにもない。
微小なる"予感"だってはたらかない。

霊感がまったくないか、守護霊が強力なのか。
ま、そうでもなければ車で量るほどいるであろう怨念や怨霊やなんやか、百鬼夜行する古都に住めるわけがないか〜なんて思ったりもする。

余計なものは見ざる・言わざる・聞かざる。
やっぱり、これがベストなんかな?

そして、今時のこの、「大家」と「店子」の関係!
こんなの今も存在…というか、生き残っているのかな?
プライバシー重視で余計な口を挟まれたくない、とか、見られたくない、とかそんなことばかり、日本社会では発達しちゃったからねぇ。
大家さんの家(部屋?)に入りびたり、ってちょっと考えられない状況です。
ちょっと羨ましいけど、やっぱり面倒くさいとか、煩いとか、思ってしまうんだろうなぁ。
でも、こういう下宿であったなら、子供を預ける側の親は、とっても安心するんだろうねぇ。

ISBN:4758051763 コミック 宮本 福助 一迅社 2005/09/24 ¥580

北宋風雲伝 11

2005年10月4日 読書
五鼠、初登場!というか、勢ぞろい。
なんて気前のいい!

これでいよいよ武侠小説の真髄が…。
と思うけど、あくまでもこれはロマンス主体の武侠漫画なんだね。

主役・陛下の御猫・展昭が、目の前に才(でも武術)色兼備の月華をおいて、いつまで理性を保てるか?というのが主題になってきているし。
おまけの旅行記が今回は間に合わず、それがとても残念だった。

展昭の出生の秘密は前回ほぼ明らかになったけれど、月華の出生にもいろいろ問題と謎が山積みのようで、まだまだ続くよ、楽しみは…♪
そう思うと、意外にこの作者、じらし方が上手いよなぁ。

最近友人から借りて中国産の武侠小説なるものを読み始めている。
その荒唐無稽さが、とっても面白くて、きっとそれが受けている理由なんだろうと思う。
でも、
普通の人間ならありえねー、
っていうか
重力に縛られている地球人にはできねーよ絶対、
ってことがよくもあり悪くもあり…で、そこが鼻につくともう駄目だろうなぁと、気真面目に読む人だともしかして腹立たしいのかな?とか考える。
こういう小説はこういうもので、こうやって楽しむんだってことが分からなければね。
(ああ、だから大人に人気なのか)

そのあたり、この「北宋風雲伝」の猫も鼠もまだまだ人間の能力内で活躍していると思われる。
せいぜい屋根を飛び回り、木の枝を飛び交って空中戦をやるぐらいだし。
ねずみ(白 玉堂)が異常に女好きだというほかには、そんな破綻した性格はしてないし。

この通りの原作なのか。
いやいやなんと言っても中国武侠小説なんだ。
現代日本に受け入れてもらえる程度に作者がおさえているのかもしれない…その可能性は高いだろう。

硬い絆の義兄弟…の五鼠(ごそ:鑚天鼠・盧方、撤地鼠・韓彰、穿山鼠・徐慶、翻江鼠・蒋平、錦毛鼠・白玉堂)も、もっととんでもねーやつだと思っていたのに、えらい誤解でした。
侠客…っていうと、どうしてもお尋ね者、江戸時代の股旅をイメージするからね。
とんでもない。
普通の、実業家だったり学者だったり引退した軍人さん(つまり元公務員)だったりしました。
これは失礼をば。

ISBN:4253193862 コミック 滝口 琳々 秋田書店 2005/09/16 ¥410
男らしいいお二方の肖像画…風表紙である。

流石だ。
凛々しい。
格好よい。

さて。
女王がいじけている間に、社会はどんどん悪く、人の心はどんどんすさんでいる。
女たちにしいたげられていた男たちが、とうとう立ち上がった(?!)
といえば聞こえはいいが、内容は暴動である。
あんまり、というか、よくはないわな。

善玉と悪玉が入り混じり、そろそろ皆さん、本性が…本音が見えてきましたか?
意外に意外なヤツがとんでもないヤツだった…ということが分かった貴重な一冊である。

あ〜それにしても、ネストラさんに感化されたルカ…にだまされるライサ補佐官。
このまま行くと、楽しいお笑いキャラになりそうで、楽しみ…(笑)

ISBN:4253192610 コミック さちみ りほ 秋田書店 2005/09/16 ¥410

大当たり!

2005年10月3日 読書
あたりだ!
「運命は剣を差し出す」は大当たりだ!

二人と一匹、ときどき+ひとり。
…で、旅は続く。

賞金稼ぎに、逆恨みの追っ手、一人盛り上がる傭兵志願の若者。
などなど、「流血女神伝」につづく、黄門様諸国漫遊記みたいになっているが、あっちでイベントこっちで大騒ぎ、と飽きない趣向がとっても楽しい。

真っ白な狼…嗚呼いいなぁ、私も欲しいなぁ。
ぎゅ〜っと、首っ玉に抱きつけるぐらいの大きな犬が大好きです♪

小さい犬は知らずに踏んでそうで怖いのだ…(←粗忽者)

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