狂気の目撃者 〜ラミジ艦長物語19〜
ダドリ・ポープ 著
小牧 大介 訳

1803年
カリブ海から本国へ向かう途中
フリゲート艦 カリプソ号

悪魔島に流刑になったフランス王党派を救いだし、カリブ海のバルバドス島へ向かったラミジ。
鎮守府長官テューチンには敵のフリゲート艦2隻というお土産を持ってきてやったにも関わらず、72隻もの船団の護衛任務を押し付けられる。
しかも、捕獲した2隻の船、ラ・ロビュスト号とレスポアール号を加えた3隻で。

挙句、本国からの手紙で、海峡で別れた妻・サラーの乗った船が行方不明であると知り、意気消沈するラミジ。(新婚旅行の途中で別れたのだから当然である)

ただ唯一の救いは、船団のなかにあのヨークが、若い船主エドワード・ヨークが、美しい妹アレクシスとともに存在することか。(ほらほら、一人の女の影にはまた一人の女が潜むという、例のアレだ)

そして英本国への順調な航海の途中(珍しくも船団の船長たちはあまり手間をかけさせなかったのだ)(笑)、出会った英国のフリゲート艦に、カリプソ号はまさかの片舷斉射を受ける。

英国艦に見せかけて実はフランス艦か?!
田舎の牧師にしか見えない黒衣の人物は本当にシャーリー艦長なのか?
彼が指揮するフリゲート艦・ジェーソン号はいったいどうしてしまったのだ?

口をつぐむ士官たち。
拗ねたもの言いの航海長。
びくびくしている乗組員。

その答えは英国本土にあった。

すなわち。
帰還したラミジを待っていたのは、軍法会議であった。
しかもあのゴタード下級提督が議長を務めるという(しつこい男だなぁ…(笑))

なにゆえにラミジは軍法会議にかけられねばならないのか?
最後の1/3は軍法会議でのやりとりとなる。

ラミジ艦長物語といえば政治的な問題で海軍内に強力な敵を持つラミジがいかに罠(=軍法会議)を切り抜けるか、というのが物語初期の見どころであった。
それがネルソン提督の登場などでしばらく表に出てこなかったのが、ここにきて、出たわけである。
ああ、久しぶりだね、ゴタード提督、と感慨にふけるのも、まぁ今のラミジをどうこうするのは難しかろうという読者の読み(あるいは物語傾向への慣れ)もあるからだろう。

彼らラミジの強大な敵も、これで息の根を止められた感がある。

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