グリン・ダニエル 著
小林 晋 訳
扶桑社

レンタル本。

舞台は1939年の3月。
その数週間、いや、十数日を描いた推理小説だ。

ケンブリッジ大学内のフィッシャー・カレッジで殺人が起こった。
しかも二件続けて。

最初に見つかったのは夜警の死体。
その次に見つかったのは、教授の死体。
しかもこれ以上はない、と思えるほど、同僚や生徒や妻にまで憎まれていた男の死体だった。

頃は学年最終日。
学生たちは最後のお祭り騒ぎを済ませて翌朝には故郷へと旅立つはずだった。

その混乱に乗じて行われた殺人事件である、とだけはわかったが、わかったのはそれだけ。

動機。
チャンス。

それはたくさんの人間が持っている。
生徒も教授もすべてをひっくるめて。

アリバイ。

それは誰もがいい加減だ。
門限に遅れて塀を乗り越えて帰ってくるへべれけの学生が後を絶たないとなれば。

おまけに、"素人探偵が多すぎる"(笑)

サー・リチャード(考古学教授)をはじめとし、「私は犯人を知っている」的な発言をする素人が、しかも当事者が多すぎて、警察を惑わす…まではさすがにいかないけれど、捜査の進捗を遅れさせるぐらいはする。
惑わせる、悩ませる、という具合に。

とうとう地域の警察ではどうにもならずスコットランドヤードの軽視がご登場と相成ったが、彼自身も「私は知っている」的な証言に振り回されがち。

自分の信念に従って勝手に探偵活動を始める教授に至っては、捜査妨害の疑いも掛けたくなる。

この辺がこの小説の真骨頂か。
非常に楽しく読めたが。

そう。
英国の警察って寛容なんだね、とおもうことがしばしば。
警察への証言に嘘ばかり並べているのに、すごく丁寧に慇懃に事情聴取をするのはお国柄だろうか?

今の英国警察は、泥棒ひとつ捕まえられないへたれだとは、有名な話だけど。

あちらこちら迷い道に招かれつつなんとか迷路を脱出して正解のゴールにたどり着いた警視さん。
だけど真犯人と素人探偵サー・リチャードとの密約は無視していですかい?
それって犯人幇助とかなんとかなるんじゃないんですか?
と突っ込みを入れたくなるのもしばしば。
このサ−・リチャードはシリーズもので出てきて素人推理を展開する(多分それが正解へと近づいてゆくのを楽しむのだろうと思われる)登場人物らしいのだが、やたらと容疑者をかばう癖でもあるらしい。

しかも個人的な好悪で、その時の一番の容疑者を、警察の目から目くらまししようとしている…わけではないんだろうが、いちいちそうなるという奇矯な行動をとるひとだ。

戦前だからいいのか?

「どうせそのうち大きな戦争が起こって、田舎の殺人事件なんて誰も問題にしなくなる。」
「戦争ではもっとたくさんの人が死ぬんだ。」

っていうのは、真実とは言え、教育者というか、教授職にあるいい大人の発言ではないと思いますが…

というように、変わった色合いの推理小説である。
著者も大学関係者だから仕方がない…?(笑)

あ、それと。
日本と違って外国の大学の研究者の待遇っていいとは聞いていたけど、いいねぇ〜うらやましいわ〜ご飯の用意をしなくても、あんなにいいもの(どうせ英国料理だから断言はできないが)食べられて、廣い部屋でのんびり暖炉で足をあぶって読書三昧。
まあそのかわり、資格を取るのにすごい苦労するとは言うけど…それこそ資格試験に受からないと追い出されるとか…自分より能力が上の人が来たら追い出されるとか。

どこまでも戦って勝ち取っていくのがあちら風。
勝者敗者の差は歴然として雲泥の差。

ほどほどのものを生ぬるく入手するのが日本風。
一度ゲットしたら死ぬまで離さないし、はなさなくていい…。

そういうイメージなのかなぁ。
当事者じゃないのでわかりませんが。

参考 

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