ダモイ遙かに

2008年6月26日 読書
第二次世界大戦後、ずいぶんと長い間シベリア抑留は続いていた。

日本人捕虜はすべて送還した、というソ連邦の白々しい嘘。
「死ぬまで働け」
と嘲笑い虐待と強制労働に駆り立てたソ連。

興安丸がナホトカから抑留者を連れ帰った1956年。
その年に、日本政府は発表していた。
「もはや戦後ではない」
と。

食べるものもろくに与えられない。
労働には不可能なノルマが課せられ、不達成者は食事を削られる。
体力がなければノルマは達成不可能だ。

そうやって、死んでゆく。
ゆっくりと。
病弱なものは早く。
耐えられないものは自ら命を絶って。

自分の身を守るために、日本人同士が密告しあう。
共産党思想を叩き込む、特別な立場の(ソ連側の)日本人の存在。
同胞が憎みあうようにするやり方は、支配する側(ソ連)にとっては一番簡単で手軽な支配方法である。

その中で、「希望を失うな」「ダモイ(日本への帰還)を信じよう」と言い続け、人の心を鼓舞した一人の人間。
その周囲でその心にふれ、希望を広げた人たち。

思い届かず異国の地に没した同胞の思いを、遺書(=家族への、日本という国への思い)を暗記することで伝えようとした人たち。(文字を書いたものはすべて没収されたという。スパイとみなされたのか?)

また君たちはどんなにつらい日があろうとも、人類の文化創造に参加し、人類の幸福を増進するという思想を忘れてはならぬ。偏頗で矯激な思想に偏ってはならぬ。どこまでも真面目な、人道に基づく自由、博愛、降伏、正義の道を進んで呉れ。
最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。友だちと交際する場合にも、社会的に活動する場合にも、生活のあらゆる場面において、この言葉を忘れてはならぬぞ。
人の世話にはつとめてならず、人に対する世話は進んでせよ。但し、無意味な虚栄はよせ。人間は結局自分一人の他に頼るべきものが無いーという覚悟で、強い能力のある人間になれ。自分を鍛えて行け!精神も肉体も鍛えて、健康にすることだ。強くなれ。自覚ある立派な人間になれ。(山本幡男氏:子供たちへの遺書より抜粋)


山本氏の遺書を、手分けして暗記して祖国の家族へ届けた複数の人たち。
最後の遺書が届いたのは、昭和62年であったという。

子供にも読みやすいように文章は簡易に、漢字にも読み仮名を増やしてある。
兵士だけではなく、民間人や女性までもを抑留し非人間的な扱いの果てに虐殺したシベリア抑留。
この歴史もまた、忘れてはならない。

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