ラミジ艦長物語1 〜イタリアの海〜
ダドリ・ポープ 著
山形欣哉/田中航 訳
至誠堂出版

久々に〜病院への持ち込みで読んだ。

改めて読んでも面白い♪
嗚呼懐かしい、海洋小説が珍しく(笑)次々と発刊された日々!

1775年生まれの英国海軍将校ニコラス・ラミジは、現在21歳の若者である。
濃い色の髪、落ちくぼんだ黒っぽい褐色の瞳は相手を射すくめるように厳しく、水兵はラミジの前では嘘はつけないと思っている。
肩幅は広く、腰は細くひきしまり、まるでギリシャの彫像のようだ(サウスウィック航海長の言)
ロープの組継ぎ、マスト登り、何であれ、水兵裸足でこなしてしまう。
だから"慣れすぎる"と一部の士官が眉をひそめるほど、水兵に人気が高いのだ。

そんなラミジだが、人には負えない大きな十字架を背負っていた。
それは第10代ブレージー伯爵にして白色艦隊提督であった父が、政治の犠牲となり軍法会議で有罪となったからだ。
ニコラス・ラミジ7歳のときである。

その父の息子、ニコラスが海軍に志願したのは13歳の時だった。

無実の父を陥れた政治家たち、その政治家と結びついた海軍の上層部(提督・艦長達)の、ラミジに対する風当たりはきつい。
些細なことがあっても、あの父の息子を痛めつけようと虎視眈々と狙っている。
その中でラミジは戦う。
敵はフランス。
そして……。

第一話は、ナポレオンに反抗するイタリアの要人の亡命を助けよ、という密命を受けたブリッグ艦シベラ号の3等海尉ニコラス・ラミジが登場する。
それもいきなりフランスのフリゲート艦バラス号にめちゃめちゃに粉砕され、もはや舵もきかず、兵員も激減、艦長以下戦死…あとは座礁するか敵に撃破されるか、降伏するか。

ちなみにブリッグ艦とフリゲート艦では、船の大きさも乗組員(=戦闘員)の数も、搭載している砲数も違う。
なにより船足(速度)が違う!
フリゲートは別名"艦隊の目"と言われる艦船である、といえば察しはつくと思うが。

言うまでもなく、戦力においては、ブリッグ<フリゲート、である。

生き残ったうちでの最上級者ニコラスが、シベラ号を指揮し、艦長が受けた密命を実行し、生き残りの水兵たちを脱出させ、負傷者たちを生き伸びさせるために知恵を絞る。

まずはこの困難な状況から脱出し、イタリアへ上陸して、亡命者たちを助け出さねばならない。
だが地中海は海も陸もフランス軍が闊歩する現状だ。
ラミジはどうやって作戦を実行するのか。

そしてロマンス!
海洋小説でもちゃんとあるわけで。
しかも相手は大物……(笑)

海洋冒険小説好きにはおなじみのホーンブロワーも名前だけ登場し、ネルソンも絡んでくる。
ラミジがあーでもない、こーでもないと悩む心境も細かく書かれている。
まだ21歳だから、悩み多き青年なのは当然だろうが、それでも部下の水兵たちからは頼りにされ信頼される存在だ。
第1巻ではまだまだだけど、2巻以降は部下たちのラミジに対する噂話や水兵同士の些細な喧嘩や日常のやり取りが他の海洋小説にはない楽しさを醸し出している。

至誠堂からは無理でも、中古本などではまだ入手可能なようなので、海洋小説に興味ある方には是非!
御一読いただきたいお勧めのシリーズである。

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