十津川警部の本としては高価なほうだと思う。

そしてこの物語では、珍しく決着がつかないのだ。
犯人が確定されない。
容疑者は出てくるが…謎のまま、中途半端に終わる。

それは被害者も容疑者も、と津川警部の大学の同級生であることも影響しているのかもしれない。

会津精神「ならぬものはならぬ」というその思いを現世に持ち続け、理想の女性を求めてきた男。
その彼を中心にした仮想小説を書き、作家になろうとする男。

後者が殺され、前者が容疑者となった。

両者が残した手記が、事件の真相を語るはずだが、表と裏ほどに話が違いすぎる。
どちらが本当なのか?
悩める十津川。

真実はどちらにあるのか?
真相は?

被害者も容疑者も、ふたりの友は死して語らない。

会津精神、というのは、幕末の新撰組を辿ってゆくと行き着く一つの道でも在る。
だから、意外にその逸話は知られている…と思う。
日本人として逆賊といわれながら、明治政府においても不当な差別を受けながら歯を食いしばり、努力に努力を重ね、時代の表舞台にあって活躍した人物を出したほどだ。(例えば義和団事変の時、北京の日本大使館付き駐在武官で防禦線に活躍した人物は会津出身である)

だが自刃とは…あんまりといえばあんまり。
時代にそぐわないような気もするのだが、会津の人は未だにそんなまっすぐな気持ちの持ち主が多いということなのだろうか。

ISBN:4575007676 新書 西村 京太郎 双葉社 2008/01 ¥840

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