大泥棒…というわけではない、バーニィ・ローデンバーは古本屋の主人でもある。
たいして儲からないが。

その分は夜の仕事でまかなっている…のかどうか。
その性分、相手(被害者)の心情をついつい慮ってしまうせいか、あまり得をしている、大もうけをしているようには思えない。

とある日。
かれは夜の街を徘徊していた。
…がゆえに、ついついふらふらと他人様のアパートに忍び込む羽目になってしまい(?)そこでとんでもない犯罪を目撃。(人死はなし)
ついで、そのことが、彼を覚えのない重大犯罪(3人死亡)に巻き込むきっかけとなってしまう。

訳がわからないままに殺人事件に巻き込まれたバーニィだったが、いつまでもその現状に甘んじているはずはなく、真犯人にたどり着くべくアドリアネーの糸をぐいぐいと手繰り寄せるのであった。(切れない程度にね)

最後の最後、容疑者や被害者や役者を集めての謎解き、はちょっとポアロを思い出す。
名前がややこしすぎて(東欧系が…)覚えにくいのが難といえば難なんだけど。

相棒(?)が百合族の、ペット美容室の女性というのも…なんともはや今までにない世界を展開していると言うか。

ところで、話の中にコンラッドの海洋小説云々の話も出てくる。
「密偵」という古本を巡っての話だ。
そしてこの推理小説の奥底にロシアに痛めつけられたラトヴィア国民の復讐譚が存在する。
ポーランドの没落貴族の家系であり、ロシアによってシベリアへ流刑とされた両親のもと育ったコンラッドが心臓発作で死ぬまでロシアに対しては相容れなかった…というのも当然のことであろう。
小説を進める道具として彼の名前と作品を出してきたこと、その作品名が「密偵」だということ、に、また何重もの意味を込めたのだろうなぁと感心する。
小道具の配置や配役のしかたなど、実に細かい気遣いをする作家さんなんだろうと推測した。

そして、アメリカの課税制度とか医療制度とか、よく判らないなりに勉強できたと言うか、教えてもらったというか。
やっぱりよくはわからなかったけど(笑)

それと、やたら英語の駄洒落っぽい言い回しが多くて、これって原書で理解できる人なら大笑いして楽しめるんだろうなぁと思う。
これもまた、細かいところ、話の隅々まで力を抜かない作者ゆえのことなんだろうけど…(笑)
外国人にはお手上げ(笑)
シェークスピアを読んでいて飽きるのも(参るのも)その辺だからね。
翻訳書だとぴんと来ないんだよね。

つまり、悲しいことに日本語訳ではその楽しみは半減以下ではなかろうか。
そのことが、ちょっと勿体無い気もする。

ISBN:4150018022 単行本 田口 俊樹 早川書房 2007/07/13 ¥1,470

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