桜とSL(蒸気機関車)と中年の男女の姿。
2歳半の人間の記憶をどこまで信じてよいのだろうか?
かすかに覚えているその記憶を信じて、天涯孤独の青年は日本中を巡る。
己のルーツを捜し求める旅に。
そして執拗にくり返される誘拐事件。
青年を狙う男達の目的は何か?

隠された誘拐事件。
隠されたルーツ。

己の不幸を社会のせいにし、他人に転嫁し憂さを晴らす。
不幸のループは際限がない。
どこかで断ち切るしかないのに…。

それは誰かが纏めて飲み込まなくてはならない濁流に似ている。

自分のルーツ。
自分が何者か。

それだけでも知りたいよね……

例えば。

中国残留孤児は、お金が欲しいのではない。
皆が皆、日本に移住したいわけではない。
ただ、自分が何者か、どこから来たのか、それが知りたかっただけなんだろう。

人は獣とは違う。
ほかの生き物達とは違う。
社会性がある、という、まさにその通り。
人と人の間に有って生きてゆくものだから、自分の立ち居地を確認しながら生きてゆくものだから、本当の<孤独>になったら生きてゆけない。

家系図、とは言わないまでも、自分の家族は確認したい。
実際、確認しつつ生きているのではないか。
だからこそ、幼少時に「自分は他所のうちの子供なんだ〜」症候群に掛かるのではないだろうか?
ふとそんなことを思ったりした。


ISBN:4041527775 文庫 西村 京太郎 角川書店 2007/10 ¥540

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