京都生まれで京都育ち、でもいまは外国暮らしの著者。
…には京都に非常な(異常な?)こだわりがある。
「京都人だけが知っている」で京都人の本性を暴き、大爆笑とともに京都人に受け入れられた、と言う過去をもつ人。

*「京都人だけが知っている」はほんまに名著!なのでぜひともご一読あられたし!
これを読んで怒らず、大爆笑した京都人というのも見直してほしいところですわ。ふっふっふ……。(余計こわ、なるかもな)

この本も、京都人の生活についてのこだわりとか京都人の不気味さと言うかなんともいわれず妖しげなところとか…を京都人らしくねちねちと書いているのだが、どうやら『食』についての記載が多いように見受けられるのは私の気のせいか?

京都の和菓子は高い。
そんなことは京都人がよく知っている。
でもね…それだけの価値あり!とみとめている。
それだけの労力とか工夫とか並々ならぬものがそこには込められている。
だから高くても妥当な値段なのだ。
そして、だからこそ、一個からでも堂々と買えるし、手土産にするにもなんら気が引けることもなし。
それは著者の言うとおりだ。

そして…よそ(他所)へ行くたび和菓子を食べて"にやり"としてみたり……
"いちびり"ですね。

秋の猪肉。
これも臭いと言って嫌う人がいるけど、それはきっとお安い"イノブタ"を食べたんじゃないかな?
京都市内には美味しいイノシシ鍋専門の料亭がある。
牛肉屋さんなのに、季節になるとこっそりと(?)猪肉の並ぶ店もある。
ちなみに、牛肉の何倍もの値段である。

著者の「京都人は肉食」という言葉には大笑い。
でも確かに其の通りだと思う。
盆地ゆえに限られた食材。
京(みやこ)ゆえに各地から強制徴収(?)したさまざまな食材。
好奇心旺盛な京都人……。
何でも口に入れてみる。
その好奇心の強さと新しいもの好きの血はいまでも観ることが出来る。

冬の千枚漬けは、実は"とろ"をまいてお醤油をつけて食べるのが好き。
だから食べたくなると冬でなくても千枚漬けを捜したりする。(保存用?が出てくるのか、時折デパートなどでは季節に関わらず千枚漬けが売りに出されている)

春の花漬け(菜の花漬け)は、白川女をもっとくたびれさせたようなおばちゃんたちが各家を回って売りに来る…のが好きだった。
さすがに市中心部に引っ越してからはそれは無理。
お店で売っている(あれは観光客用か?)綺麗な黄色と緑で活き活きとした花漬けとは違い、どす黒くって塩が効いていて…でも味は、あれ以上のモノは未だ食べていない。

"つて"のある知人の知人から一時はその昔ながらの花漬けを分けてもらったりしていたんだけど、いつの間にやらルートが潰滅したらしい……悲しい。

…とまぁ、「食」について語らせたら、夫々が一家言を持つ。
というか、わがままでこだわりをもっていて、"自分(の好み)が一番"と口に出さずに心で思っているのだ(笑)
"かわいそうに。こんな美味しいものを知らんと"なんて。
自分本位で自分勝手。
そんな京都人の"いちびり"をまたこの著者は書いてくれているのかな、と期待しながら読み始め。

私に関しては、市内とはいえとんでもない田舎に生まれて住んでいたので食生活がそんなにバラエティに富んでいたわけでもない。
お嬢様でもなかったのでおかずが何品も並んだ食卓に座していたわけでもない。
それでも…食べるものに関しては、貧しかったというイメージは無い。(豊かさを知らなかっただけだろうか?)
なんでも美味しかったよなぁ……
っていうか、当時食べていたものがきっといまは高級料理ならぬ高級食材とかになっていそうな気がするのだ。
京野菜なんてそのさいたるもの。
錦の小奇麗な八百屋さんで、網駕籠にセットで売られていて、まるで飾りものみたいやん。
あんな高い野菜、食べられますかいな、というわけで、九条葱ぐらいなら兎も角、賀茂茄子ですら長いこと食べていない……。
丸茄子で代用してます。

それにしても、英国在住の著者のほうが京都にこだわりが深いし熱い。
関東に住んで数十年、人生のほとんどを東国で暮らしながら、正月は"白味噌!"をかたくなに守り続けていたり、京都にお里帰りするたびに牛肉をどっさり買い占めていったり……
その必死さは、心から"すごい"と感嘆する。

他所で暮らす人のほうが"京都・京都"と拘る傾向にあるようだけど、著者もきっとそうなんだろうなぁ。

離れて判る。
ふるさとのありがたさ。
(なにしろ食べたいもんがすぐ手に入るし〜)

ISBN:4344409345 文庫 入江 敦彦 幻冬舎 2007/04 ¥600

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

日記内を検索