懐かしい、という本だから、やっぱり画像が……出ない、か。

これも好きな漫画だった。
主役は黄子満…同人のパロディで「キッコーマン!」なんてのもあったな(笑)

昭和の初期から戦争にかけて、大陸に、特に舞台は上海だったが、中国に渡ったもののそこで夢破れて阿片と酒に身を持ち崩して、ぐずぐずと…。

まさしくぐずぐずと腐って命を落としていった日本人達。

それは漫画で、さほどショックを感じはしなかったが、文章だけでここまでショックを感じるとは…。
いや、ショックではないか。
驚きと言うか、あの漫画のまま、というか。

この本の題名の、
「どくろ杯」
は象徴ではなく、まさしく人間の、しかも処女のどくろで作った酒盃であるとのこと。
そんなものを荷物から取り出して、「これを元手に勘を儲けて…」なんて朽ちたアパートの一室で打ち明けられてもねぇ。
しかも、例えばそんなこんな曰くの在る小金を手にした彼らが何をするかといえば、放蕩三昧。
近場の蘇州あたりにくりだして、贅沢に浪費する。
なんか、ぜんぜん建設的ではないんですけど。

こういう日本人がごろごろしていたようです。
それだけで、なんというか、何もいえないというか。

独特の世界だ。
一番近いのは、
20数年前の中国奥地(いろんな意味で)。
電気もまともにないのか、夜の夜中の露店で、灯りは豆電球ひとつ。
しかもその電線はどこから伸びているのやら判らない。
その電線の伸びる先は暗闇だから。

そのわずかな黄色いといか赤いというか…の灯の下に男たちが3〜4人集まってなにやらぼそぼそと喋っている。
そういう塊(島)が、ぽつん、ぽつん、と数箇所にある。
これが夜の市、だというのだから。

……なんというか、不気味な雰囲気の、宜昌の町。

あの光景が、目に焼きついている。
今ではぎんぎんぎらぎらの中国であるけれど、一歩路地に入ったら、判ったものではないぞ、と思う。

ISBN:B0000BX76L コミック 森川 久美 角川書店

コメント

nophoto
睡蓮
2007年6月6日22:28

金子光晴の世界って、独特でハマルと凄いですよ。
なにしろ戦時中は抵抗詩を書き続け、息子に赤紙がきたら、風邪をひいているのに一晩雨の降る外に立たせて肺炎を起こさせ招集免除させたって話もあるし。
奥さんの方は小説家としてそれなりに鋭いんだけど、金子には及ばないというか。戦時中にホイホイと政府の派遣で仏印に行ってるし。フランス語で歌を歌って歓迎してくれる可愛いベトナム人の子供に喜んでるし。

翠雲
翠雲
2007年6月7日18:06

女はひとときの感情で生きている、の体現かもね。
しかしこの夫婦はどっちもすごいというか凄まじいです。
一言で言えば「変」

夫々恋人を作っているだけではなく、世間で言うところの夫の責務・妻の責務がまったくない(笑)
いや、責務と言うとおかしいかな。夫・妻という感情がない、というべきかも。
自由、といえば聞こえはいいけど、それだとなんで結婚したの?やっぱり出来ちゃった婚だから?それだけのこと?
文章が…緻密な文章がコワイですね。
ほんまはまったら怖いやろうなぁ。
体中の血が一箇所に集まって沸騰していそうです。

戦時中の徴兵逃れは、皆(親)イロイロ考えたみたいね。昔々教科書で読んだんだと思うけど、北杜夫が医学部に行ったのは、父である斉藤茂吉が「徴兵が遅れるから」と無理やり医学部へ放り込んだのだ、とぶつぶつ言っているエッセイだかが有りました。
これなんかはまだ、普通だったんだね。
教科書といえば、きっと金子光晴なんかも載っていたんじゃなかろうか?
怖い詩だったのではなかろうか…?

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