死を覚悟して敵前に身をさらし、爆弾や鉄砲弾による直撃壇などで戦死する者の多くは「天皇陛下万歳!」と一声上げて果てた。重傷を負った後、自決、あるいは他決で死んでいくものは「おっかさん」と絶叫した。負傷や病で苦しみぬいて死んだ者からは「バカヤロー!」という叫びをよく聞いた。「こんな戦争だれが始めた」と怒鳴る者もいた。
壕内では、たいがい「おっかさん」と「バカヤロー」であった。地下壕の中での生活は、人間界の極限に挑戦しており、いかなる文字を並べてもその実情に迫ることは不可能である。
「バカヤロー」
「こんな戦争だれが始めた」
と、我々が叫ぶような未来が来て欲しくは無い。
わざわざそういうのは、また、こういう書籍が増えてくるのは、野性の(?)勘で、本能で、私たち人間が、日本人が、"何かやばいもの"を感じ始めているからだ。
「死んでね…。意味があるんでしょうかねえ。どうでしょうねえ。だけど、無意味にしたんじゃ、かわいそうですよね。それはできないでしょう。"おめえ、新で、意味なかったなあ…"っていうのでは、酷いですよね。家族に対してもね。そして、どんな意味があったかというと…これは難しいんじゃないですか?
まあ、(死んだ戦友たちに対しては)俺はこういう生き方しかできなかったんだ。勘弁してくれって言うだけです。これで許してくれ。これで精一杯なんだ、と」(NHKスペシャル【硫黄島玉砕戦ー生還者61年目の証言】に登場した著者・秋草氏の言葉)
「どんな意味があったか、それは難しい。でもあの戦争からこちら六十年、この国は戦争をしないですんだのだから、おめえの死は無意味じゃねえ、と言ってやりたい」(同、放送されなかった続きの言葉より)
「バカヤロー」
「こんな戦争だれが始めた」
そう叫んだあとは、私たちはもう、涙を流すしか、泣くぐらいしか術は無いのである。
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