読了いたしました。
慣れるまで、なかなか大変(笑)
普通の小説だと、まったくの第三者の視点からすべての登場人物を描くか、探偵、あるいはその他の誰かの視点を借りて描くか。
どちらかしかないと思うけど…これはすごいよ。
出てくる人から人へ、時には絵画(のなかの人物や静物)、時には木々、時には…と、バトンタッチして話を進めてゆく。
しかも殺人事件×2件、という話を、犯人を捜しましょう、という話、つまり推理小説なのだから。
話を追ってゆくだけで大変。
なぜならば、16世紀のトルコという舞台設定だけでも異質。
馴染みがないから良く分からない。
社会制度も、イスラム教と言うことぐらい。
中心になるのは著名な細密画師たち。
その中の二人が無残に殺害され、その犯人を探し出さねば、容疑者は平等に(?)スルタンの命令の元、拷問される…という。
細密画って、私は知らなかったんだけど、「アラーの神の視点で描く」コーランや書物の挿絵であれば、OKなんだそうだ。
それが、自分のため、例えば、子孫に自分の肖像画を遺すとか、そういうのはダメ。
スルタンたる王についても、勿論ダメ。
だって、それに向かって祈れ!という事になれば、アラー以外の者を崇拝し拝んだってことになるからね。
つまり、イスラム教で禁じる偶像崇拝になるからだ。
殺人の理由もそこらへんの事情が大きく絡んでいる。
…と分かったのは、ほとんど終わりがけで、それまで筋を追うので必死だった、正直言うと(笑)
だけど、こういう特殊なW世界(イスラム社会の歴史上のことである&細密画師という特殊な職種である)を描くのには、この方法が一番だったかもしれない。もしかしたら。
凄惨な犯人のいぶりだしと、その最期。
細密画師が眼を使いすぎて盲目になってしまう。
それがしばらくすると、盲目に成らない細密画師は、たいした腕前ではないという。
だから、自分で眼を潰してみたり…。
盲目になることへの憧れの気持ちとかが生まれてきたり…、なんだか歪んだ方向へ意識が流れてゆく。
なんか怖い。
こういうことって、凄く奇異に感じることなんだけど、それは私がイスラム教徒ではなく、イスラム世界を知らないからだろうと察する。
そして、これらはすべて本当のことなんだろう。
著者、オルハン・パムクは画家を目指していたことがあるというから。
だからそのあたりの歴史や事情は相当に詳しいはずだ。
自分の肖像画を残したいかどうかは別問題として、イスラムに生きてなくてよかったと、今の私は思う。
ISBN:4894344092 単行本 和久井 路子 藤原書店 ¥3,885
慣れるまで、なかなか大変(笑)
普通の小説だと、まったくの第三者の視点からすべての登場人物を描くか、探偵、あるいはその他の誰かの視点を借りて描くか。
どちらかしかないと思うけど…これはすごいよ。
出てくる人から人へ、時には絵画(のなかの人物や静物)、時には木々、時には…と、バトンタッチして話を進めてゆく。
しかも殺人事件×2件、という話を、犯人を捜しましょう、という話、つまり推理小説なのだから。
話を追ってゆくだけで大変。
なぜならば、16世紀のトルコという舞台設定だけでも異質。
馴染みがないから良く分からない。
社会制度も、イスラム教と言うことぐらい。
中心になるのは著名な細密画師たち。
その中の二人が無残に殺害され、その犯人を探し出さねば、容疑者は平等に(?)スルタンの命令の元、拷問される…という。
細密画って、私は知らなかったんだけど、「アラーの神の視点で描く」コーランや書物の挿絵であれば、OKなんだそうだ。
それが、自分のため、例えば、子孫に自分の肖像画を遺すとか、そういうのはダメ。
スルタンたる王についても、勿論ダメ。
だって、それに向かって祈れ!という事になれば、アラー以外の者を崇拝し拝んだってことになるからね。
つまり、イスラム教で禁じる偶像崇拝になるからだ。
殺人の理由もそこらへんの事情が大きく絡んでいる。
…と分かったのは、ほとんど終わりがけで、それまで筋を追うので必死だった、正直言うと(笑)
だけど、こういう特殊なW世界(イスラム社会の歴史上のことである&細密画師という特殊な職種である)を描くのには、この方法が一番だったかもしれない。もしかしたら。
凄惨な犯人のいぶりだしと、その最期。
細密画師が眼を使いすぎて盲目になってしまう。
それがしばらくすると、盲目に成らない細密画師は、たいした腕前ではないという。
だから、自分で眼を潰してみたり…。
盲目になることへの憧れの気持ちとかが生まれてきたり…、なんだか歪んだ方向へ意識が流れてゆく。
なんか怖い。
こういうことって、凄く奇異に感じることなんだけど、それは私がイスラム教徒ではなく、イスラム世界を知らないからだろうと察する。
そして、これらはすべて本当のことなんだろう。
著者、オルハン・パムクは画家を目指していたことがあるというから。
だからそのあたりの歴史や事情は相当に詳しいはずだ。
自分の肖像画を残したいかどうかは別問題として、イスラムに生きてなくてよかったと、今の私は思う。
ISBN:4894344092 単行本 和久井 路子 藤原書店 ¥3,885
コメント