私にとっては初読のフリーマントル。

東西冷戦華やかなりし頃の、スパイ小説である。
そして半端じゃないこだわりのある(癖のある)、作家。
友人からお借りしました。

冴えないスパイのチャーリー・マフィン(英国のスパイにはチャーリーという名が多いように思うのは私の気のせい?)は、公立学校(グラマースクール)出の、所謂下層階級とみなされている。
ゆえに、英国情報部のボスが変わり、「情報部員はエリートの職場」という偏見に満ちた改革を行っている中では非常に立場が弱かった。
なにかというと"労働者階級"と言う言葉が使われ蔑まれる。

本当に、英国ほど差別意識の激しい国はないよね。
同じ国に住んで同じ言葉を話しても(同じ言葉にしては随分激しく訛りもあるが…日本だって同じだ)異なったふたつの種族なんだそうだ。
つまり、ホワイトカラーとブルーカラー。
上流階級と労働者階級。
両者はまったく別の人間なんだってさ。

         ……くだらない。

20有余年の実績も功績も無視され、どんどん閑職へ降格させられ(ようと)する。
挙句、東ベルリンからの脱出口においては、他の情報部員から注意を紛らわす為のおとりとして抹殺されかかる始末だ。

…チャーリーの方が一枚も二枚も上手で、そうは問屋がおろさない、のだが。

一見、出世コースからは激しく逸脱した、くたびれたオヤジにしか見えないチャーリー。
若手のエリート情報部員に鼻で笑われるチャーリー。
だが彼の本質はそんなものではない。
彼は、何十年も情報部で戦い、生き残ってきたツワモノなのだ。

勿論、その彼の真価を評価するものはいる。

皮肉なことに、KGBであるが(笑)
とっつかまえた大物KGBに、逆スカウトとかされてるしな(笑)
なかなか味のあるオジサンではある。

そんななか、ソ連からKGBの将軍(大物)の亡命の情報が入手される。
チャーリーを疎外してことにあたろうとする英国情報部。
手柄を独り占めにされてたまるかと、首を突っ込んでくるCIA。
やはり両者は犬猿の仲なのか?

さてさて…
英国情報部(MI6?)、CIAときたら、NATOは…?
と思わず突っ込みたくなるところだが、意気揚々と出かけていった"エリート"情報部員はとっとと始末されて、英国情報部の面子は丸つぶれ。

世の中そんなに甘くない、という現実を突きつけられて、彼らはどうするか。
その先はこれから……未読だから(笑)

ISBN:B000J8HJI4 − 稲葉 明雄 新潮社 ¥378

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