失礼ないいかただけど。

…久しぶりに秀逸!
なにより筋がすっきりして、寄り道もなく、分かりやすく、読みやすい!
この、読み易いというのが大切だと、私は思う。

だって学術書じゃないんだし。
いや、学術書だって文章力は問われる。

冗官(任官試験には通ったが、現在予備役。実際にしごとしてませんけどお給料は貰ってます〜というお役人だ)はクビ!
ということで、無駄な予算を削減しましょうと表向きはなるほどな理由で始まった官僚の大改革。
蓋を開けてみれば、というか、その本音は、邪魔な管理を一掃してしまおうという小ぶりな陰謀であった。

この物語の世界では、官吏・官僚には二つのパターンがある。
非常(非情でもいいかも)に厳しい国試(任官試験)を受けて合格し、官吏の資格を得、なんらかの役職に就く。(就かなければ"冗官"である)
これはいわば正統ルートというか、過酷な試験を潜り抜けた本当の秀才たちが選抜されるのだから頭も良い。

もうひとつは、力のある貴族の子弟が、推薦だけで役職を得るもの。これまた名前だけの冗官になって遊んで暮らすものも多い。(もともと働かないのが貴族だから、こっちの方が目的かも)

その二つが、現在は勢力を二分している。
…で、この機会に、じゃまな女官吏を抹殺するついでに、「邪魔な国史出身者を」「邪魔な貴族出身者を」抹消しましょうと、それぞれの思惑を秘めて話は進む。

新しい、御史台というお役所が出てきて、そこはまあ調査室みたいなこともやるのだが、そこのトップが無茶苦茶いい性格をしている。
友達も部下もいい性格をしている。

秀麗はその連中に目をつけられ、邪魔と判断されて、まぁ…酷い目に遭うわけだが。

女としての徳性を"甘い"とか"所詮お嬢さん"とか言われてしまう。
それは確かだけど、男しかいなかった官僚世界だから、それが常識とか当たり前とかルールとか、そういったものですべてを断ずる。
それが間違いだと言うことに、気がつかない。
なにもかも、"自分が正しい"と思うことが、間違っている。
"間違っているかも知れないけど、自分はこれで行く"
というのが覚悟ってもんだろう。

女の判断が間違っている、女の判断では無理。
その言には、実はなんの根拠もない…ってことに早く気がつかせてやれればいいね。
そうは思うが、作者の意図はいずこに?
どこにあるや知れず、ではなんともいえないか。

ここまで深入りして、擬似中華風・美形勢ぞろい・お楽しみ小説を、どんどん(別方向の)深みにはめてしまって、なんとかなるのか?
バランスは大丈夫なんか?と思わずにはいられない。

まぁ…人間離れした連中ばかりでてきてうんざりさせられるよりは、はるかにマシだけど。

国母になって、政治改革。

…というのは、そんなに悪い手ではないと思うけどな。
正面攻撃が許されない女の、必殺技。
使ってなにが悪い〜?へっ! てなもんよ。


……………………
で。
この彩雲国。
どうにも構成が納得いなぬ。

それぞれの有力家が王家なんかほったらかして勝手に支配できるようでもある。
それぐらい王家をないがしろにしている様子である。
なら、いっそ、夫々の国が勝手に王様を抱いていればいいのではないか?
なんで王様にお仕えするの?
しかも、いきなりもう、辞めさせて帰ってこさせるとか、えらく簡単に決めてるし。
じゃあ何のために首都へいって宮仕えなんかするんだろう?
行儀見習いはそれこそ、どこでもできる…。
各地の有力者(八色の人たち)の存念が良く分からないなぁ。
それともこの物語は、王様を中心に官僚が頑張って中央集権国家を作りあげるという、壮大な物語だったのだろうか?

でもな〜たいしたことない、意味もない、と思っている王様なら、自分のとこの姫君を嫁がせる意味もないような。
勿体無いような。

その辺、作品の設定がいまいち不明ですナ。


ISBN:4044499128 文庫 雪乃 紗衣 角川書店 ¥500

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