先の読んだ「ハラスよ!!ありがとう」の大人版…。

読み始めた時「しまった…!」と一瞬おもったが、すぐに「まいいか」と考え直す。
私らしい(笑)

ただ、子供向きに書かれた「ハラスよ!!ありがとう」にはないエピソードも入っているので、それを楽しんだ。
なんと言っても犬のはなし。
重なる話を読んでも、ちっとも苦にはならない。

それどころか、著者夫妻のハラスへ愛情を、失った時の哀しみを、慟哭を耳元に聞きながら読んでいた。

表紙は著者の知りあいである山岳画家の熊谷 榧(かや)さんスケッチによる陶板。
雪山で4日間、行方不明の後、生還し、皆が泣きながら喜んでいるた時のハラスをモデルにした。

本書には所々に、歌が挿入されているので、気に入ったものを挙げておく。ハラスの成長・老化とともに、著者の心に去来した、その時々の思いである。
そこには感じるものも多かった。

・年々春を惜しまんと欲すれど春去って惜しむを容さず     (蘇軾)
季節がすぎるように、人は年を取る。犬はもっと早く年をとる。最初の1年に20歳、あとは4歳づつ。(年×7倍という説もあり)

・つひに行く道とはかねて聞きしかどきのふ今日とは思はざりしを    (在原業平)
いつの間に、ここまで年をとったのか。毎日忙しくしていると"死"の存在すら忘れてしまう。しかし。"死"を忘れんがため毎日を忙しくしているのかな?と思わないでもない。

・犬は犬、我は我にて果つべきを命触(ふ)りつつ睦ぶかなしき   (平岩米吉)
犬は犬であって犬ではない。すでに家族である。その気持ちは良く分かる。

・犬として死に行く犬の老姿ひたに見つめてわれはありけり

・あたたかき舌を触れつつわが掌(て)よりもの食(は)む日々もはやつきんとす

・わがそばにありて縁(えにし)のつくるまで静かに生きよ腰は萎ゆとも   (平岩米吉)

2004年、著者はハラスのもとへ旅立った。

ISBN:4167523019 文庫 中野 孝次 文芸春秋 ¥470 

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