著者の最初のエッセイ集、なんだそうだ。

英国に留学し、その後何度も渡英し、物書きになってからは見聞を広めるというのもひとつの理由で、カナダにもアメリカにも、知人を訪ねて出かけた。

その旅路での著者の思いを綴っている。
だけど、単なるエッセイではないね、勿論。

この人は判断はしない。
断言はしない。
いいとか、悪いとか、決めつけない。

ただ淡々と、綴るだけである。

主役は、著者が英国で生活していた時の家主である。
ウェスト夫人はアメリカ生まれのクェーカー教徒であり、ヨーロッパでの集会で夫となる英国人と知り合い、英国に渡った。
「理解は出来ないが受け入れる」
という彼女の考え方、生き方は、見ているこちらがとっても歯がゆかったりしんどかったりする。
著者の淡々とした、(判別しない・決め付けない)文章でさえその想いは伝わってくる。

キリスト教徒がイスラム教徒を理解できないように。(たとば一夫多妻制とか)
人種が違うというだけで、その思考の違いが理解できないように。

理解は出来ない。
だけど……あるがままに受け入れる。
ウェスト夫人の下宿には、だから、ほかでは受け入れられないいろんな人種・いろんな思考・いろんな宗教の人々が集まっていたという。
だけど、人の想いは同じだと思う。
違うからといってそっぽを向くのではなく、心の奥底ではわかって欲しいと相手を求めているのだ。
そうだ
共感してもらいたい
分かり合いたい
うちとけたい
納得したい

私たちは
本当は
みな

著者がそう書いているところ。
それがこのエッセイの心臓部分である。

著者の思いを凝縮した、この数行の、誰にでもわかる。

言いたいのは。

この、簡単なことばなのだ。

ISBN:4101253366 文庫 梨木 香歩 新潮社 ?420

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