ブルースター兄妹探偵譚、第三弾!

お金持ちの大伯父さんから屋敷を相続(条件付だけど)したのはいいものの、日々の暮らしが改善したわけでは全然ない、ロバートとリリーの兄妹。

だけど、田舎町では「丘の上のお屋敷に住む大金持ち」と見られて、取り繕うのも大変。

…でも、なぜ?
取り繕わなけりゃいけないの?

本当のこと(町の皆とまけず劣らずビンボーだってこと)を言っちゃいけないの?

言ってしまえば、「有閑階級なんだから」の一言で押し付けられる義務(お金とひまのかかること)は回避できるはず。

そうリリーが思い始めた頃、敷地内の、長らくほったらかしにされていた氷貯蔵倉庫からミイラ化した死体が見つかったー!

また!!死体!?

しかも、しっかり殺人だし…。

おまけに近くの森からもうひとつ他殺死体が……。

嗚呼。

第一次世界大戦の復員軍人に対するアメリカ政府の扱いの不味さを象徴する、そして当時のフーヴァー大統領の政治手腕のなさを暴露した「ボーナス軍攻撃事件」を背景に、ロバート&リリーの推理は冴える…?

ボーナス軍、というのは、復員軍人に対して、政府が払うと決めていた特別の年金(=ボーナス)からの言葉で、1945年から支給とされていたのを、1929年の大恐慌でどーにもならなくなった傷病兵が先払いしてくれ、と政府に訴えたことから始まる。
遠隔地から、復員軍人(傷病兵)やその家族が、徒歩や馬車でワシントンを目指し、何万人もの包囲網(?)になったというもの。
勿論、お金なんかなく(だから繰上げ支給を求めたんだから)貧しい身なりでバラックを建てて住んだりしたから(周辺の州でいくらかは受け入れたりしたらしいが)悪臭ぷんぷん、衛生的にかなり問題になったことは想像しなくてもわかる。

首都ワシントンの周囲でそーゆー状態が続くと、為政者はどうするか?
これも想像するまでもない。
正規軍を投入し、水をかけたりテントに火をはなったり、からだの不自由な復員軍人(傷病兵)を力づくで追い出したという。

そのときの司令官が後のGHQのボスであるマッカーサー。
副指令が、第34代大統領であるアイゼンハワー。

被害としては、復員軍人2名+生後間もない赤ん坊がなくなったと公式記録にはあるとういうもの。

この事件がフーヴァー大統領の息の根を止め、次の大統領にルーズベルトが就くことになった。
そして、共産党が勢力を拡大する…のもむべなるかな、の時代であった。

…とはいえ、現代アメリカではこの「ボーナス軍」については、あまり知られてない…というか忘れられているようだ。

どこの国も同じく。
臭いものには蓋をする。

こんな世相では、リリーが考えたように、裕福でいることは、とっても危険なことかもしれない。
だがそれよりも、正直に話しちゃったほうが、ずーっと気持ちが楽だよね。

ロバートなんかは調子に乗っちゃって、兄妹探偵社を開業するつもり(一時的な気の迷いか?)、のような勢いだし。

次回から探偵社開業?
それも面白いだろうなぁ。

ISBN:4488275117 文庫 戸田 早紀 東京創元社 ?798

コメント

nophoto
睡蓮
2006年9月30日23:01

馬鹿デッカイお屋敷っていうのも、案外困りものですよね。
敷地内全部に目が届かないから、知らないうちに誰かが死体を捨てに来るし・・(^o^)
って、まるで昨今問題になってるゴミの不法投棄みたい。

翠雲
翠雲
2006年10月1日10:15

農家とか山持ちとか、そうでしょうね。
知らないうちに首吊りされてたり、放棄されていたり…ばったり出会うのはゴメン蒙りたいけれどね。

知人の知人(壮年男性)が昔、山のぼり中に首吊り死体(警察の調査の結果自殺だったらしいが)を見つけたとか。
剛の者だったので、用事を済ましてから下山して(単に下山して通報して、それからまた登るのが面倒だったらしい)警察に通報。
ところが、道案内を、ということでもう一回登る羽目になって、「当たり前や!」「人非人!」「罰当たり!」「祟られるわ!」とさんざんけなされたそうです。
あーあ。

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