"スイカズラ荘"改め"Grace and favor(グレース&フェイヴァー)荘"。

ロバートとリリーの兄妹が相続して住む、田舎の大邸宅…は、ほかに3人(弁護士夫婦とメイド)を入れてたった5人の住人が住むばかり。

彼らにこの遺産を残した大伯父さんのホレーショー・ブルースター氏の奇妙な条件。
それが、このGrace and favorの由来である。
というのは、グレース&フェイヴァーとは【王室終身貸与権】のこと。
その内容は、王様が臣下にたいする褒美として、一代に限り終身(死ぬまで)王様所有の領地や屋敷などを貸しましょう…というもの。
この場合、ロバートとリリーの具体的な相続条件としては、
?10年間、ここに住むこと。
?1年の内、2ヶ月を越えて屋敷を出てはならない。

そして何より困りものなのは、大貧乏な二人への「お小遣い」は一銭もない、ということ。
認められているのは、屋敷の修理など、管財人(弁護士のプリニー氏のこと)が必要経費と判断しただけなので、つまり、衣・食は自分で面倒を見なくてはならないのだった。
もちろん、10年無事に済めば(管財人がOKと認めれば)すべての財産は丸々二人のものになるんだけど。
10年…それまで、どうやって生きるわけ?
これって、遺産相続っていうの〜?
大伯父さまとしては、単に財産を譲渡する、というのは気に喰わなかったご様子。
自分達で"生活する"手段を持たない者には、コイン一枚渡す気はなかった、というのが本当のところだろう。
ま、もともと億万長者の子供として生まれて贅沢三昧をしてきた兄妹ですから…いかに今大貧乏をしている(探偵社に調べさせていたという)とはいえ、簡単に遺産を渡すつもりにはならなかったんだろうね。
分からなくはない。

だけどしかし、単に、世話のかかる屋敷だけを貰ったような…ああでも、世間様はそうは見ない。
こんな大きな邸宅に住む人は、有閑(金と暇を持て余している)階級だと決め付けている。
また、それをわざわざ否定してまわるのも、ちょっとねぇ…。

二人の苦難は続く…。
で、賢いリリーは考えた。
?下宿人をおく
?金持ち時代の友人(今も金持ち)を招待して、有料のパーティを開く。

とりあえず…?の方法でやってみよう!と話は決まり、有閑クラスの興味を惹くようなゲストをご招待しようと動き出した。
数うちゃ当るではないけれど、一人の有名作家が快諾の返事をよこし、それに釣られた友人達が続々とグレース&フェイヴァー荘へとやってくる……はいいんだけれど、またしても(!)そこで殺人事件が!

犯人が見つからなければ、容疑者(ゲストたち)はグレース&フェイヴァー荘に滞在し続けなければいけない。
犯人の解明も大切だけど、「滞在が伸びれば、(食費とかいろいろで、会費をオーバーするから)利益が出ない!」と内心焦るリリーがいとおしい(笑)
犯人に殺されかけ、昏倒して見つかった友人の医療費を「本人が払いますから」と即答するロバートが可愛らしい。
行方不明者のにおいを辿るよりも、疲れて悩めるご主人(リリー)よりも、台所で残り物をゲットするのに夢中なアガサ(飼い犬・♀)が……。

いいバランスです。

でっかいお屋敷を相続したはいいけれど、維持費と生活費をどうするか、どうやって稼ぐか。
それが最大の問題であった英国の貴族の方々。
それとおんなじ状況かなぁと思うのですが。

…とりあえず、下宿人ひとり、げーっと♪
                    で、よかったね。

PS,色白&黒髪のおにーちゃん・ロバート。
表紙絵はどうみても金髪なんですけど……。いいんですか?いいんですね?(ささやかな疑問)

ISBN:4488275109 文庫 戸田 早紀 東京創元社 2004/02 ¥798

コメント

nophoto
睡蓮
2006年9月12日0:37

3巻目、読了しました。
面白かったよ〜

翠雲
翠雲
2006年9月12日15:54

>睡蓮さま。
毎度ありがとうございます。
いい調子でテンポもよく進む推理小説です。
時代設定も小憎いし(笑)

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

日記内を検索