主婦探偵ジェーン・シリーズを書いている女流推理小説家の新しいシリーズ。
とりあえず訳出3冊のうち2冊を借りて読み出した。
あっという間に…読了。
それだけ面白かったということだ。
さて、
場所はアメリカの田舎。
時代は1931年…といえば、1929年にウォール街から始まった【世界恐慌】真っ只中。
来年の大統領戦に民主党のルーズヴェルト知事が出馬するとかしないとか…噂されている。
主役は表紙のふたり、元大富豪・現大貧乏のブルースター兄妹。
兄はロバート。
妹はリリー。
彼らは早くに母親をなくし、あとは気ままに豪勢に人生を過ごしてゆくのだと信じて疑わなかったある日、父親が株で失敗(大恐慌のため)、自殺。
すべての財産を失った。
そしてそれからの2年以上を、エレベーターのないアパートの5階で、今にも抜けそうな床の狭い部屋で細々と暮らしてきたのである。
かつての大富豪が!
そこに転がり込んできたのが、大伯父ホレーショー・ブルースターの遺産相続の話であった。
むか〜し、むかし、そんな伯父さんいたような、うん、いたわねぇ。
というわけで、「なぁんじゃぁそりゃぁ〜?」というような、とんでもなく特殊な相続条件も背に腹はかえられない!というわけで相続したのが、とんでもなく田舎にある"スイカズラ荘"。
…というのが、まずは背景として、読者が了解すべき時代背景として説明される。
また、変った時代を設定したもんだわね〜と思わざるを得ないのは、大恐慌といえば、日本の不景気どころの話じゃないでしょ?と思うから。
映画「タイタニック」の、恋敵役の大富豪(ヒロインに振られた)も、結局はこの大恐慌で拳銃自殺をする。
かの悪名高き禁酒法も重なって、いつの時代も明るいアメリカ♪とはかなり違った時代だろうと…思ったんだけど。
話を読んでゆくと、あちらこちらで失業者の群ができ、それはどんな田舎でも同じことであって、中年のお勤め人は、自分の今の仕事に必死にしがみついている。
それがどんな仕事であろうとも…。
でも。
それでも、彼らブルースター兄妹の住むことになった田舎・ヴォールブルグ・オン・ハドソンでは、互いにできる範囲で、自分の手の届く範囲で助け合っている。
そんな気持ちを彼らが持つのは(気づくのは)随分たってのことだけど、読み手にもなにか訴えかける感じさせるものが存在するのだ。
たかが推理小説と侮るなかれ。
……そう、この小説は推理小説なんである。
不幸な若者二人が、思わぬ贈り物に「ラッキー♪」「ありがとう(忘れ去ってた)大伯父さん♪」で終わるわけはない。
遺産相続、とくれば、その遺産を残した人間は、不審死、つまり謎の死を遂げてなくてはならない。
平たく言うと、殺人、ということ。
期待通り(?)ホレーショー・ブルスター大伯父サンは、船の事故でなくなっていたが、それは事故死ではなく殺人だった。
ここで、ロバートとリリーも気がついた。
村の人々の、不審そうな目つき。
あれは、彼らを"第一容疑者"とみなしているのだと。
降りかかった火の粉は払わねばならない、というわけでもないけれど、大伯父さんの死の謎をそのままにはしておけない。
ふたりは早速動き出す。
…というわけで、人物紹介とともに、ヴォールブルグ・オン・ハドソンの環境、村の人々などを続々登場させて(大型の迷い犬も登場♪)、次々おこる事件⇒第二の殺人⇒推理、となる。
探偵役は妹のリリーのほうだけど、普段はほけ〜として社交界の夜の生活(笑)に思いを馳せてばかりいるような(と思われる)兄・ロバートが、いいところでぴりりと効く推理を披露。(いいとこ執りで、ちょっとずるい気もするが)
見所は情緒たっぷりの1930年代の田舎の生活と、オランダからの入植者であった遠い祖先のレシピを代々語りついで守ってきたというプリニー夫人(弁護士氏の奥様)の料理の素晴らしさ!
名前だけ見てもさっぱりだけど(アメリカ人であるリリーもさっぱりだ、というのだから日本人である私には仕方がなかろう)、涎が出そう…。
この作家さんの作品は初読だけど、面白い、好みに合うね。
PS,あ!よく見たら、表紙絵のリリーのワインレッドのドレスの膝部分にパッチワークならぬ、継ぎはぎが…!
ISBN:4488275095 文庫 戸田 早紀 東京創元社 2002/08 ¥840
とりあえず訳出3冊のうち2冊を借りて読み出した。
あっという間に…読了。
それだけ面白かったということだ。
さて、
場所はアメリカの田舎。
時代は1931年…といえば、1929年にウォール街から始まった【世界恐慌】真っ只中。
来年の大統領戦に民主党のルーズヴェルト知事が出馬するとかしないとか…噂されている。
主役は表紙のふたり、元大富豪・現大貧乏のブルースター兄妹。
兄はロバート。
妹はリリー。
彼らは早くに母親をなくし、あとは気ままに豪勢に人生を過ごしてゆくのだと信じて疑わなかったある日、父親が株で失敗(大恐慌のため)、自殺。
すべての財産を失った。
そしてそれからの2年以上を、エレベーターのないアパートの5階で、今にも抜けそうな床の狭い部屋で細々と暮らしてきたのである。
かつての大富豪が!
そこに転がり込んできたのが、大伯父ホレーショー・ブルースターの遺産相続の話であった。
むか〜し、むかし、そんな伯父さんいたような、うん、いたわねぇ。
というわけで、「なぁんじゃぁそりゃぁ〜?」というような、とんでもなく特殊な相続条件も背に腹はかえられない!というわけで相続したのが、とんでもなく田舎にある"スイカズラ荘"。
…というのが、まずは背景として、読者が了解すべき時代背景として説明される。
また、変った時代を設定したもんだわね〜と思わざるを得ないのは、大恐慌といえば、日本の不景気どころの話じゃないでしょ?と思うから。
映画「タイタニック」の、恋敵役の大富豪(ヒロインに振られた)も、結局はこの大恐慌で拳銃自殺をする。
かの悪名高き禁酒法も重なって、いつの時代も明るいアメリカ♪とはかなり違った時代だろうと…思ったんだけど。
話を読んでゆくと、あちらこちらで失業者の群ができ、それはどんな田舎でも同じことであって、中年のお勤め人は、自分の今の仕事に必死にしがみついている。
それがどんな仕事であろうとも…。
でも。
それでも、彼らブルースター兄妹の住むことになった田舎・ヴォールブルグ・オン・ハドソンでは、互いにできる範囲で、自分の手の届く範囲で助け合っている。
そんな気持ちを彼らが持つのは(気づくのは)随分たってのことだけど、読み手にもなにか訴えかける感じさせるものが存在するのだ。
たかが推理小説と侮るなかれ。
……そう、この小説は推理小説なんである。
不幸な若者二人が、思わぬ贈り物に「ラッキー♪」「ありがとう(忘れ去ってた)大伯父さん♪」で終わるわけはない。
遺産相続、とくれば、その遺産を残した人間は、不審死、つまり謎の死を遂げてなくてはならない。
平たく言うと、殺人、ということ。
期待通り(?)ホレーショー・ブルスター大伯父サンは、船の事故でなくなっていたが、それは事故死ではなく殺人だった。
ここで、ロバートとリリーも気がついた。
村の人々の、不審そうな目つき。
あれは、彼らを"第一容疑者"とみなしているのだと。
降りかかった火の粉は払わねばならない、というわけでもないけれど、大伯父さんの死の謎をそのままにはしておけない。
ふたりは早速動き出す。
…というわけで、人物紹介とともに、ヴォールブルグ・オン・ハドソンの環境、村の人々などを続々登場させて(大型の迷い犬も登場♪)、次々おこる事件⇒第二の殺人⇒推理、となる。
探偵役は妹のリリーのほうだけど、普段はほけ〜として社交界の夜の生活(笑)に思いを馳せてばかりいるような(と思われる)兄・ロバートが、いいところでぴりりと効く推理を披露。(いいとこ執りで、ちょっとずるい気もするが)
見所は情緒たっぷりの1930年代の田舎の生活と、オランダからの入植者であった遠い祖先のレシピを代々語りついで守ってきたというプリニー夫人(弁護士氏の奥様)の料理の素晴らしさ!
名前だけ見てもさっぱりだけど(アメリカ人であるリリーもさっぱりだ、というのだから日本人である私には仕方がなかろう)、涎が出そう…。
この作家さんの作品は初読だけど、面白い、好みに合うね。
PS,あ!よく見たら、表紙絵のリリーのワインレッドのドレスの膝部分にパッチワークならぬ、継ぎはぎが…!
ISBN:4488275095 文庫 戸田 早紀 東京創元社 2002/08 ¥840
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