蒼々たる執筆者(いずれも英文学の学者ー女性)が分析する。

学者さんたちの、しかも同性(女性)が細かく細かく中身をチェックするのは本当にすごい。
…つうか、怖いぐらい(笑)
だから、翻訳者の誤訳もきびしく、びしびしと指摘する。
「こんな訳はまったく正反対だ!」と。
話が登場人物の言葉が何を意味しているかを神学や古典に求め、そこから本当の意味を引っ張り上げるとなると、翻訳者の単に"推理小説を日本語に直す"だけではダメな事になってくるのだ。

もともとP・D・ジェイムズの作品って推理小説というより純文学に近い匂いが雰囲気があるといわれているからなぁ。
主役のひとりであるダルグリッシュ警視なんか、自分で詩まで書いちゃう人だし。
著者は否定しているけど、だいたいコーデリア・グレイという名前そのものからしてシェークスピアを連想させるでしょう?

まあそういうことはさておいて。
P・D・ジェイムズの、"推理小説"の奥深くに描かれた"本当の思い"とは、その奥底にわだかまり澱む意識なのかもしれない。
それは女である著者が、女である登場人物を通して、社会に知らしめる言葉である。
知らしめる…というのもちょっと違うか。

そこまで主張はしていないけど…静かに示す、語る、みたいな。

この本はとっても面白かったし、「そこまで深読みしますか?!」というぐらい徹底的に彼女の著書を分解し解剖し白日の下に知らしめているのだけど、ただ最大の難点が…!

それは、ずばり犯人を語っていること!
   
   …なので、P・D・ジェイムズの推理小説を全部読んでから(せめてここの俎板に乗っている分は読んでから)こちらを読むことをお薦めします。

というわけで、ここに取り上げられているのは。

*女の顔を覆え
*女には向かない職業
*わが職業は死
*罪なき血
*皮膚の下の頭蓋骨
*死の味
*策謀と欲望

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