やっと入手の建築探偵。
シリーズ(4冊)のラストの一冊は「只今入手できません」状態なので、これが暫定的ラストとなる。

日本の洋館は、明治維新でどばっと入ってきたアメリカ風の悪乗りにもうひとつ乗っかって、世界でも珍しい「これはなんじゃ?」状態の楽しい洋館が目白押しらしい。

旅行時にあれこれ有難がって写真撮影とかしている日本人が多いけれど(わが京都では、古の洋館ツアーみたいなのもある)奇妙奇天烈な建築物であることも頭の隅に置いておくべきかも。

とはいえ。
日本的には重要文化財。
100年経ったら、重要文化財(笑)

ねらい目としては、昔の財閥系の銀行かなぁ?
ただ、京都市内の烏丸(ローカル話題ですみませぬ)通に林立していた銀行の建築群はここ数年でどんどん新築され、まるで「鹿鳴館の舞踏場♪」と密かに思っていた吹き抜け広間・室内テラス付きの古い建物がどんどんなくなっている。

三条の(旧)第一勧業銀行とか。
四条の(旧)三和銀行とか。

それがとっても残念だ。
著者じゃないけど、銀行だったら客の振りして入れるからな。

あれは解体された後、どこへ行っているのか…?
明治村?
まさか潰してほかして(捨てて)いるんじゃあるまいな?!

あとは高級ホテルに泊まるぐらいしか、昔の洋館の、スバラシイ建築を楽しむ手段はなさそうだが、どれもこれもお高い!

ところで、長野県で製糸工場を経営していた会社の倉庫(木造6階建て!)と植物園やら散歩のための庭のある、ドイツのスパを見本にして作られたらしい大浴場・「片倉館」という建物が出てくる。
毎日の重労働に疲れた身体を癒すため、製糸工場の労働者である若い女性達を船で(湖畔に立っていたので)ここへ運んだ、という歴史があるお風呂である。
「女工哀史」とか悲惨の極みだったからね…。
そこまでではないけれど、戦後も日本の製糸業は若い女性達が支えていた。
近年長い歴史に幕を下ろした某超大企業も、もともとは繊維から出発した企業であり、嘗ては信州に大工場を所有し、そこでは若い女性達が日々業務に励んでいたという。
そこで"監督官"をしていたという方を知っているのだが。
ほとんどが中学卒(?)ぐらいで、昼は労働、夜は夜学へ通わせていたとか。
仕事だけではなく、その勉強や生活面まで面倒(監督)をみていたので、"ほとんど保護者か、或いは女子高の舎監状態だった"と言っていた。

(なぜかは知らないが)監督官は大学出たての新卒(勿論男性)を任命するのだそうで、年のさもほとんどない…から、そりゃぁまぁ、いろいろと、いろいろと(笑)…大変だったそうだ。
「女工哀史」のような酷い労働ではなかったそうだけど、中にはホームシックで夜中に失踪し、大慌てで探してみたら、夜道を親元に歩いて帰ろうと歩いていたのを保護したとか、そんなことが年に何件かあったそうだ。(大変だなー)

でも、今でも(とはいえ10年ほど前の話だけど)そのときの集まり(同窓会)みたいなのがあって、呼ばれるのだと。
"皆、いいおばちゃんばっかりになっているけどなー"と嬉しそうに語っていたのを思い出す。

ほのぼのな…これもまた、製糸工場の歴史の一幕か、とも思える。


ISBN:4022611812 文庫 増田 彰久 朝日新聞社 1997/04 ¥840

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