夏向きに涼しいものを…と思って手にしたひとつがこれ。

岡本綺堂…といえば、時代劇。
「半七捕物帳」とか。(未読だけど)

それが関東大震災で全部失ってから、作風が怪奇ものに変更していったらしい。
半七でもそれなりに雰囲気は漂っていたらしいが。

この本は、「百物語」風に、好事家が寄り集まってお話をする。
その講演風のものを速記から書き起こした、という形式をとっており、中身は中国の古い時代から新しい時代へ、順を追って進んでゆく。

…つまりやね。
"どこかで聞いたぞ"
という話が出てくる可能性もあるってわけだ。
「牡丹灯篭」などは中国の怪談をそのまま日本風に焼きなおした物語でもあるし。

「捜神記」(六朝)
「捜神後記」(六朝)
「酉陽雑俎」(唐)
「宣室志」(唐)
「白猿伝」(唐)
「録異記」(五代)
「稽神録」(宋)
「夷堅志」(宋)
「異聞総録」(宋)
「続夷堅志」(金・元)
「輟耕録」(明)
「剪燈新話」(明)
「池北偶談」(清)
「子不語」(清)
「閲微草堂筆記」(清)

以上から、抜粋された怪談を分かりやすい口語で物語る。
時代(昭和10年ごろ)を考えれば、画期的な一冊だったと思う。

化け物物語(笑)としては、「捜神記」などは有名だけれど、その他の文献は珍しく面白かったろう。

「序」が海音寺潮五郎氏、というのがまた贅沢だなぁ。

一番笑えたのは(怪談なのに、結構笑えるものがあるのだ)、器に魂が宿って悪さをしたりする、という話で、その"怪"の見栄え(見た目)が異様である。
怪なんだから、異様なのは当然だというなかれ。
それなりに、人間を驚かそうというのであれば、それなりに、怖い!とかおぞましい!とかそういう姿をとるはずなのが…目が離れすぎ鼻と口がくっつきすぎで、怖い、というよりも…"ヘンだぞ?"
なんである。

ことが解決してみれば、"怪"はどこにでもある(?)付くも神だったんだが、子供がいたずら書きしたがゆえに魂を得てしまった…という器(甕だったかな?)であった。
だから、その顔が「笑える」……。

見事退治(破壊)された"怪"
これは…あんまりではないかい?

ISBN:4334741150 文庫 岡本 綺堂 光文社 2006/08/10 ¥700

コメント

nophoto
乱読おばさん
2006年8月31日22:29

いやあ・・・これ、なつかし〜♪
私・・ものすごく古いの持ってます。一つのネタ本ででもあったりして・・。実は、コレが私の中国怪奇物・・志怪ものへのきょうみのきっかけだったりするわけです。はい。

翠雲
翠雲
2006年9月1日10:30

>乱読おばさま

お久しぶりです〜。ご無沙汰して申し訳ありません。
乱読おばさまにとっては、昔ながらの愛読書なんですね。さすが、納得…というか(笑)
私は、物語の内容もさることながら、百物語風に進むのがちょっと真新しくて楽しかったです。
体力が付いたら(笑)、またお邪魔させていただきますね。

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