キノトロープの劇画調・リアル絵本「水滸伝」の第三巻の主役は"行者・武松"。

でも贔屓の林冲も格好よく登場しているから許す…ちょとだけだけだけど(笑)

前半部では宋江の話もあるんだけれど……いまいちぱっとせんというか。
だいたい及時雨さんは豪傑の集まる水滸伝ではぱっとしないお人柄(頭目なのに)。
どの小説を見ても、「何ゆえに、この人が…?」という人物ではある。
それがこの絵巻水滸伝では殊更に強調されているような気も。
弟・宋清に目一杯迷惑をかけてるし怒られているし…でもって弟に勘当されてるし。

人がいいから貧乏人には好かれているし頼りにされているけど、女とばあさんにはきっちりだまされるし、嫌を嫌といえないし、なんとも優柔不断に見えて仕方がない。
弟が怒るはずだわ……。
「俺の一生はアニキの後始末をして歩くんだ…!」
なんて嘆いてますよ…彼。

……だめだめじゃん、おにいちゃん。

そんな彼にあの暴れ者・李逵が頭が上がらない。というのが物語としてはミソなんだろうけれど…これは…ひどすぎる(笑)
本誌でも、「俺が」「私が」「いや俺が助ける」と一命を賭しても宋江救出にいそしむ男達が居るわけだが、なんでそんな…というぐらい、普通の、ナサケナイ、どうしようもない一般人ですわ、宋江さん。
同じタイプだとは思うけど、めそめそしていても(by人形三国志)まだ自分で戦いの先頭にたってる劉備のほうがなんぼかましに思えてくるからなぁ。
こういうところ(こういう人格に人気が集まること)も中国の謎。

人がよいだけでは、指導者としては、ダメです。
ほんまに。

ダメな及時雨さんはまあ置いといて、後半の主役はさすが!
行者・武松といえば、虎退治、そして、ご存知、「金瓶梅」の主役、色男の西門慶と潘金蓮の密通話がからむ。
大抵の「水滸伝」では、兄思いの優等生っぽく書かれていることが多い武松も、ここではけっこーな乱暴モノ。
梁山泊によく似合う(笑)

とにかくすぐ殴るし、血を見ると止らないし、人食い虎より始末が悪い。
いやほんとに。

その武松。
兄の仇を討って見事お尋ねものになるわけだが、潘金蓮の扱いが、今までの小説とはちと違う。
はっきり言って、武松と純愛…。
許されぬ兄嫁との心の交流…みたいなの。
潘金蓮自身が、だまされて毒を盛りながら、言い訳をせずに黙って殺される、となっている。
武松に殺されるなら…みたいな。
お陰で、武松は罪の意識にさいなまれるし(笑)潘金蓮の亡霊みたいなのに付きまとわれるし(笑)
こんな話は初めてだ。

ぽちぽちと、他の宿星も登場したり舞台をかすって過ぎたりと、その絡み具合が面白くなってきた。
人には見えないものがみえまする〜と誰かさんみたいなことを言ってる施恩とか、包丁片手に人肉饅頭つくりに励む孫二娘とか。

次巻は、いい男(!)と評判の高い花栄が登場。
…でも、ちょっとでいいから林冲も出して欲しいと願う私である。(わがまま?)

ISBN:4312010080 単行本 森下 翠 魁星出版 2006/08 ¥2,625

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