蛍火の杜へ

2006年6月18日 読書
くねくねとさらさらと、実に変った線を描く漫画家さんなんだよねぇ…。
でもそれがまた魅力的で。

短編が4つ。
その中でも標題になった「蛍火の杜へ」は日本の夏、きんちょーの遠い昔の日本の夏を彷彿とさせる、情緒的な一遍だ。

夏の夜には深い杜に済む妖怪たちが、人間の真似をして夏祭りを開く。
たまには人間が、迷い込んで夏祭りを楽しむ、そんな不思議な場所。
そして時間。

都会から田舎を訪れていた少女・蛍。
彼女はそんな杜で迷子になり、人間でもなく妖怪でもない"ギン"という青年に助けられる。
狐の面をつけた不思議な青年・ギンは、山神の妖術によって命を保たれている、魂だけの存在のようなもの。
人に触れれば即座に消え去ってしまう身だ。

毎年毎夏の逢瀬に、やがて二人は心を通わせるようになる。
触れられない。
触れたい。
触れられない。
触れたい。
抱きしめたい。
抱きしめられたい……。

そんな思いが二人の間に行き来し、やがて妖怪たちの夏祭りの夜、哀しい別れが……。

良質の御伽噺。
そんな感じでしょうか。

可哀想。
なんて可哀想。
でも……。

でも、の後に続くものがある。
それが救いになる…ような気がする。

ほのぼの、でもなく、切ない、思春期の一瞬の思いのような、輝ききらめく何かを感じる物語。


ISBN:4592178904 コミック 緑川 ゆき 白泉社 2003/07/05 ¥410

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