買い集めすぎた気がしたため、手を出しかねていたこの一冊。
書店でぱらぱら読みをして、やっぱり買ってしまったこの一冊。

エッセイはいくつかの本で同じことを描いている(文章は勿論違うが)ものがあったりする。
それは当然だが、手控えの原因にはなる。

だが、この本には…今までになかった衝撃的な一文があった!
「ヨーロッパ・パック新婚旅行」である。
題名のまま。
著者と奥方の新婚旅行の旅話である。
これが…とんでもなくおかしいのだ。

何が面白いかといえば。
いかに自由気ままな著者とはいえ、この文章には、新婚ゆえの遠慮とか照れとかがところどころ見受けられるからそれが楽しいのだ。
おまけにさりげなく語られる"のろけ"!
へ〜ぇ、と思わず口元に笑いが…。

「疲れた話」
は奥方との結婚の仲人を日本の宝のような数学者の先生に頼みに行く話。
何が面白いかといえば。
いかに自由奔放唯我独尊の著者がなんと初々しいというか、借りてきた猫みたいになっているさまのそのギャップが楽しいのだ。

ところで。この本ではなく、前に読んだ本にい書かれていたことだが。
少し前に上映された「博士の愛した数式」の原作者が、数学博士という人種(?)の研究に藤原正彦先生を取材したということだ。
小説の中に"数学者"を登場させるため、その考え方とか生活とか、何を考えどんなことをし、どういう行動をとるのか、等など、藤原先生をモデルにして書かれた小説なのだという。
はぁ〜そうか。
そも、学者と言うものは、一体何を考えてなにを常識として生きて考えて活動しているのやら、我ら一般人にはよくわからない、というのが本音である。
思考のレベル…考える力ではなく、考える土台がいささか異なっているので、しばしば話が、観点が食い違う。
そーゆー人たちのなかでも数学者と言うのは特別らしく、
学者と結婚する、と奥方が父親に縁のある大学教授に報告に行ったとき、
「数学者だけはやめなさい。彼らは数学星という異世界にすんでいるのだから」(大意)
と言われてしまい、まさか「その数学者と結婚するのです」とはいえなかったという話もあった。

学者が「わけがわからん」という数学者…それを小説に描くには、わけわからん(?)数学者である藤原先生を取材するしかなかったのかなとなんとなく納得する。

映画を見に行った人に以上の件を報告すると、
「どうりで、数学は美しい…とかいってうっとりしていたよ」
とのこと(笑)
ああ!藤原先生だ!と確信した(笑)次第。

でも、数学の公式を、こうこうこう、と映画で解かれると「そのときは分かったような気になった」らしい。
さすが!


ISBN:4101248028 文庫 藤原 正彦 新潮社 1984/01 ¥460

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