この人のエッセイは本当に面白い。
次から次へと読み、次から次へと買ってしまう。

これは英国へ留学した1年間を描いたエッセイである。
若い頃にアメリカで研究生活をしていた著者は、英語には困らない…ハズであったが。
(勿論!)
英語と米語はちがうんである。

そうやな…アメリカ人の英語(米語)をふふんと笑うのなら、日本人のアメリカ英語なんか歯牙にもかけてもらえないよな。

しかも、英国人は、米語を蔑む。
レイシズム(所謂、人種差別)をちょっとしたマナー違反、ぐらいにしか思わないのが英国人だから(これもレイシズムかなぁ?)他民族を平気で侮辱する…なんてこともある。

アメリカやカナダからきた研究者の怒ること怒ること!
カナダのヴィクトリアの海岸で、イギリス人観光客がこういうのを聞いた。「殖民地もまあまあになったじゃないか」

ジョージ・オーウエル曰く、
ユダヤ人差別があることは誰もが認めるくせに、自分もその一人であることは認めようとしない
確かに!

それでも紳士の国として尊敬され、研究や学会という世界においても堂々上位に君臨するんだから、どうなんだろうね。これって。世の中ってそういうものなんですかー?(笑)

藤原さん家は、家族を連れての留学だから、いろいろと、大変なわけです。
言葉が出来ないので、コミュニケーションがとれず、間違いが多く、ゆえに子供が学校で苛められる。
コミュニケーションが取れないことと子供の問題で奥さんがノイローゼになる。
やがて研究大事の旦那(著者)と険悪な状況になり、やがて家族崩壊の危機を感ずる…などなど。

その中で、「まけるな日本人!」の古武士の気概でがんばる著者。
暢気な受け答えは緊迫感がないと思われそうだが、これはこの人の懐の深さであり、余裕なんだろう。
こうして衝撃を和らげているのだろうし、しっかと反撃を狙ってもいる。
ただやられてばかりはいない。

いじめっ子は、弱いものを苛める、抵抗しないからかさになって苛める。苛められたものが抵抗しない限り、苛めは終わらない。特に日本人(非白人)だから、という理由で苛められるということもある。
だから、逃げて泣いているばかりではダメだ。
反撃しろ。闘え。

著者はべそをかく息子にそういうのだった。

暴力を指すケンカ、ではなく、学問も研究も友達との付き合いもある種の闘いである。
自分を分かってもらうためには、ちょっとでも理解させるためには、一歩前に出るしかない。

とはいえ。
皆が皆、闘えるわけではない。
それほど強くないものもいるし、今は強くない、というものもいるよね。
将来は闘えるとしても。

いや〜、しかし。
闘ってるよな、この人は(笑)

さて、そんなイングランド人の外国人観。
面白かったので挙げてみる。いかに彼らがレイシストかってことの証明でもある。( )内は私の私見。
・中国人=ずるい、礼儀正しい(ホンマですか?!…いや、本気ですか?!)
・日本人=残酷、働き蜂
・アメリカ人=自慢好き、金持ち(羨ましい…)
・ドイツ人=戦争好き、効率的
・ロシア人=合理的、我慢強い(誉めているのではないような気がする。鉄のカーテンの中でよくガマンしたってこと?)
・イタリア人=臆病、陽気
・フランス人=情熱的、頭のよい(おや、意外。文化の経由地だから一応上にポイントが高い?)
・スペイン人=陽気、誇り高い
・ユダヤ人=音楽好き、金銭欲の強い
・スコットランド人=卑しい、ケチ
・アイルランド人=短気、飲んだくれ(じゃぁ、ライミーって誰?)
・イングランド人=ユーモア、スポーツマンシップ(自画自賛も此処まで…)(笑)

有色人種でなければ、外見では判別できなくても、そのルーツが知れると途端に態度が変っちゃうらしい…英国人ってのは。
世界中にケンカ売ってる民族なんだろうか…?
ああ、でも、そういうことが"いけないこと"だなんて感覚がないんだろうねぇ。

そうそう。
オックスブリッジ(オックスフォード&ケンブリッジ)のフェロー(教官)は、男ばーっかりで、昔は生涯独身(1882年まで結婚が認められなかった)だった。
うすぐらい蝋燭の明かりのもとで古くてでっかい机の周りに男が集まって夜遅くまで宗教だの哲学だの科学だの語らうことだけに血道をあげていた(女性の進出は20世紀後半になってからようやく認められた)…なんてなんて社会だと非難する著者に、冗談めかして「オックスブリッジは準ホモ社会である」なんつー発言も飛んでいる。(ちなみに発言者はカナダ人である)
要は、「異性間の愛より同性間の愛をより純愛とみなす傾向や、ピューリタニズムに対する反感」そして、「イギリスのインテリ階級では、男同士の友情が我々にとって気味悪いほど濃厚、ということ」らしい……。

でもって、そう思わせてしまうぐらい、英国女性は○○なんだそうだ(笑)

ふ〜ん。

ISBN:4101248044 文庫 藤原 正彦 新潮社 1994/06 ¥460

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