国家の品格

2006年2月2日 読書
前々からお顔は拝見してました、この本。
でももうひとつなにかもうひと押しするものが欠けていたのに、先日とうとう買ってしまいました。

映画の時間待ちで…こういう"浮ついた時間"ってうっかりと色んなものに"すべり"易い気がします。

著者は、あの、新田次郎氏の子息。
ほぉ〜っと思って読み始める。

……面白いやん。
文章がとっても読みやすいし、落しどころも心得ている。
関西人の鑑!

     …………いや、彼は関西人ではないのだけど。
     満州生まれだし。
     アメリカと英国で研究生活をした後、東京で働いているようだし。
     ま、勢いってことで。

…………関西人の鑑、みたいな人である。

奥さんがやたらと引き合いに出されるあたりは刑事コロンボですか、貴方は?と突っ込みたくなるけど。(恐妻家なのか?)

で、彼は何がいいたいのかというと。

『日本人ならまず日本の文化に習熟せよ。
英語だ、世界だ、グローバルだはそれからでよいのだ。』

ってことだ(ろう)。
引き合いに武士道(の精神)を出し、何はともあれ現状の日本を嘆く著者である。
それは分からなくもない、否、同感である。

「○○ではこうなのよ」
なんて、よその国の名前を出されても、
「それがどーした、ここは日本で私もあんたも日本人だろうが」
と私は主張する。
断固主張する。

日本人としての現状、日本経済の現状。
なんだかやりきれない今の社会。

戦争も、犯罪も、家庭内のごたごたも、昔はなかった、信じられなかった事件が多すぎる。
そんな想いは日本だけの現象ではなく、欧米でも多く見られる。
それは皆、昔にはなかった。

…その原因はどこに求めるのか?

すべてを論理で片付けようとする、白か黒で収めてしまおうとするからだ、と。

そうではない。
人間は理屈だけで、論理だけで、はかれないんだよ。
社会には限りなく白に近い灰色もあれば、限りなく黒に近い灰色もある。
そういう"加減"は人の情緒から経験から環境から設定されるものである。
だから、
その人間としての根底の部分を、しっかり固めなさい、というのが著者の主張だ。

英語を学ぶ前に国語を。
株や証券を習う前に算数を。
しっかりときっちりと叩き込め、と。

人間としての基礎やね…何を悪とし、善と考えるか。
それはまさしく人間形成。
小さい時にしっかりと植えつけないと。
それは理屈ではないから。
人を育むってことは、なによりも優先されるべきことなのだからね。

著者は、"悪い例"をいくつも引いて説明する。
それが結構笑い話なのだが。

たとえば、アメリカではいっとき、英語の時間にタイプを習わせた(社会に出れば一番必要な技能だからと言うのがその理由)為、軍隊の新人の何割もが「(武器や装備の)説明書が読めない」事態に陥ったらしい。
軍隊まで行かなくとも、著者が教鞭をとっていた大学では、まともな英語をかけない生徒が非常に多かったらしい。
「英語よりも…」
って他のものを優先したからだ。

笑い話ですまないのは、同じ現象が日本でもどんどん起こっているということ。
「日本語(国語)よりも…」
と、英語だ株だ、ナンダカンダを優先するとやがてはこうなるのだろう。
なんて恐ろしい話。

いや。
やっぱりね。
人間何事も基本ですよ、基本。
上にどんなご立派な城郭を建てても、土台がお粗末だったら…どうしようもない。
あとは崩れ落ちるだけ。

ISBN:4106101416 新書 藤原 正彦 新潮社 2005/11 ¥714

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