ラインの虜囚

2005年11月14日 読書
主人公は、仏蘭西(の伯爵家)を飛び出した父と、カナダ・インディアンの母をもつ一人の少女。

母のことを野蛮人と呼び、父のことを馬鹿だ阿呆だとけなす祖父(伯爵)に対し、両親の名誉を守るために単身仏蘭西にやってきた16歳の彼女・コリンヌは、祖父からひとつの条件を出される。
「ラインのほとリに起つ塔に閉じ込められた謎の人物が誰なのかさぐること」
そうすれば、おまえを認めようと。
…つまり、財産を相続させようと言うのだが、コリンヌの目的はお金ではなく名誉。
頑固で全時代的な祖父に、父と母と自分を認めさせること。

だが、そうは思わない人間もいる…んだよね……。

田中芳樹氏の珍しい(?)児童書風冒険小説。
ゼンダ城の虜とか、中国の演義とか(水滸伝や三国志など)、標題がすべてを表す描き方で、非常費面白い。

いかにもインディアン(東洋系?)の血が入っています、というヒロイン・コリンヌ。
やはりクオーター(父親がアフリカの混血)アレクサンドル・デュマ(大デュマ)。
いまや飲んだくれと化した、ようにも思えるが実は凄腕の、仏蘭西軽騎兵の勇・ジェラール准将(こういう嘗めの小説があったような…?)。
ダンディな海賊・ラフィット。

このでこぼこカルテット(?)というか、グループが、迫り来る陰謀を退け追い払いして目的を果たそうとする。

デュマの父親は「黒い悪魔」と呼ばれた百戦錬磨の仏蘭西の将軍だった。
以前読んだ小説を懐かしく思い出す。
その血を次ぐ彼が小説家…とはこれいかに。
だけど冒険小説を選ぶところは流石か。
その息子(小デュマ)のことも、会話には出てきている。
「今、6歳」
その彼の代表作は「椿姫」
祖父から父へ、父から息子へ。
実践で冒険する人⇒小説で空想で冒険する人⇒紙上で苦しい恋愛をする人
と変ってゆくのだね。

ちょっとセピアな写真っぽいイラストもなかなかいい。
子供向けなので字は大きいが、驚くなかれ、内容は大人が読むのにも充分耐えるのだ。

ISBN:4062705753 単行本 田中 芳樹 講談社 2005/07/07 ¥2,100

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