ロシアについて―北方の原形
2005年9月19日 読書
著者曰く、
「坂之上の雲」から「菜の花の沖」までロシア(ソ連邦)という国に関わって、いろいろと考察し思ったことをまとめた。
それがこの本であると。
黒てんやビーバーの毛皮を日本に売り込み、その代わりにシベリアで従事するロシア人のための食料を調達する。
江戸時代末期に日本を訪れ開国を迫ったロシアの意図はものの見事に外れた。
当然である。
てんの毛皮なんて…いまですらほとんど見ない、つうか、不要やんか、日本の気候では。
パリでは貴婦人に大うけだったらしいが、衣類の素材として日本人が好む部類ではなかったのだ、と著者はいう。
まさに。
江戸の初めに英国が交易の材料にもってきたウール製品が受け入れられなかったのと同じ。
平安の昔から、シルクやそれに順ずる衣類を身につけてきた日本人が、ずんぐりむっくりのそれらを好むとは到底思えない…よねぇ?
そういうことにまったく気がつかなかったらしいが、商売するのもしっかり下調べをしないとあかん、ということです。
ま、最も。
19世紀のアヘン戦争の当事者である英国と清朝(中国)もしかり。
ウールは要らん、お茶も要らん、という中国に、英国が無理やり押し付けたのがかの悪魔の薬だったわけだから。
司馬遼太郎という人は勿論作家である。
時代小説を多く書いた作家であるので、歴史考証、すなわち調べること・勉強することを、すさまじくやっている。
そしてそれが一冊の本としてこの世に現われずに入られないほど、溢れんばかりの量と勢いをもっている。
いつもいつも、その勢いの片鱗に、わずかに触れただけでも、すっかりまいってしまう。
圧倒される思いだ。
だいたいロシアという国に対して、日本人はいい感情をもっていない。
仕方がない。
私が知っているだけでも、第二次大戦の終了直前に、漁夫の利を得んが如くの裏切り(一方的な不可侵条約破棄〜しかもそのとき日本は、連合国側に対する終戦交渉の仲介をロシアに申し入れていたという)。
終戦後のシベリア抑留のむごさ、戦闘以外で殺された日本将兵の数のあまりの多さ。
どさくさまぎれの北方四島奪取。
等々挙げきれないほどの悪行が存在する。
だから、
「アメリカ人は(原爆や非武装地域への空襲などやったことは)許せないが友人にはなれるだろう。だが、ロシア人は(何を考えているか分からないから、いつ裏切られるか分からないから)心を許せない」
なんてことも、いわれてしまうのだった。
日露戦争の時も、「負ければ奴隷となる」の一念で抵抗したというのが日本の実情だったというし、かの国の人に対しては、ねっこの部分に「分からない」から「怖い」という意識があるのだろう。
まあね。
ゴルビーやエリティンなどは表情を見ていればある程度の感情が分かったような気になるからまだ安心するけれど、KGB上がりの現大統領のあの、色素の薄い感情の現れない酷薄そうな(悪口ばかりだなぁ…他意はないのに)顔を見ていると、やっぱり「得たいが知れん」とか思ってしまう。
よほど相性が悪いのか?
ロシアと日本って。
ISBN:4163394109 単行本 司馬 遼太郎 文芸春秋 1986/06 ¥1,260
「坂之上の雲」から「菜の花の沖」までロシア(ソ連邦)という国に関わって、いろいろと考察し思ったことをまとめた。
それがこの本であると。
黒てんやビーバーの毛皮を日本に売り込み、その代わりにシベリアで従事するロシア人のための食料を調達する。
江戸時代末期に日本を訪れ開国を迫ったロシアの意図はものの見事に外れた。
当然である。
てんの毛皮なんて…いまですらほとんど見ない、つうか、不要やんか、日本の気候では。
パリでは貴婦人に大うけだったらしいが、衣類の素材として日本人が好む部類ではなかったのだ、と著者はいう。
まさに。
江戸の初めに英国が交易の材料にもってきたウール製品が受け入れられなかったのと同じ。
平安の昔から、シルクやそれに順ずる衣類を身につけてきた日本人が、ずんぐりむっくりのそれらを好むとは到底思えない…よねぇ?
そういうことにまったく気がつかなかったらしいが、商売するのもしっかり下調べをしないとあかん、ということです。
ま、最も。
19世紀のアヘン戦争の当事者である英国と清朝(中国)もしかり。
ウールは要らん、お茶も要らん、という中国に、英国が無理やり押し付けたのがかの悪魔の薬だったわけだから。
司馬遼太郎という人は勿論作家である。
時代小説を多く書いた作家であるので、歴史考証、すなわち調べること・勉強することを、すさまじくやっている。
そしてそれが一冊の本としてこの世に現われずに入られないほど、溢れんばかりの量と勢いをもっている。
いつもいつも、その勢いの片鱗に、わずかに触れただけでも、すっかりまいってしまう。
圧倒される思いだ。
だいたいロシアという国に対して、日本人はいい感情をもっていない。
仕方がない。
私が知っているだけでも、第二次大戦の終了直前に、漁夫の利を得んが如くの裏切り(一方的な不可侵条約破棄〜しかもそのとき日本は、連合国側に対する終戦交渉の仲介をロシアに申し入れていたという)。
終戦後のシベリア抑留のむごさ、戦闘以外で殺された日本将兵の数のあまりの多さ。
どさくさまぎれの北方四島奪取。
等々挙げきれないほどの悪行が存在する。
だから、
「アメリカ人は(原爆や非武装地域への空襲などやったことは)許せないが友人にはなれるだろう。だが、ロシア人は(何を考えているか分からないから、いつ裏切られるか分からないから)心を許せない」
なんてことも、いわれてしまうのだった。
日露戦争の時も、「負ければ奴隷となる」の一念で抵抗したというのが日本の実情だったというし、かの国の人に対しては、ねっこの部分に「分からない」から「怖い」という意識があるのだろう。
まあね。
ゴルビーやエリティンなどは表情を見ていればある程度の感情が分かったような気になるからまだ安心するけれど、KGB上がりの現大統領のあの、色素の薄い感情の現れない酷薄そうな(悪口ばかりだなぁ…他意はないのに)顔を見ていると、やっぱり「得たいが知れん」とか思ってしまう。
よほど相性が悪いのか?
ロシアと日本って。
ISBN:4163394109 単行本 司馬 遼太郎 文芸春秋 1986/06 ¥1,260
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