豪雨の前兆

2005年8月14日 読書
推理小説家と思いきや、どうやらエッセイらしい。
推理小説ばかりを読みついで来たための思い込みである。
日本人の汽車旅行は体力と忍耐力が頼りの過酷なものだった。

最初の作品「夜行急行『西鹿児島行』」に出てくる文章だ。
満員の列車(しかも電化されていない=蒸気機関車)の床に座って10時間以上も掛けて故郷へ。
あるいは都会へとむかう。
それは私の親の世代の現実だ。
だから、とてつもない昔話ではない。

私自身が、現役の蒸気機関車を利用した記憶もある。
(ほとんど消えかけてはいたが)

東京が、遠かった時代だ。
上京にあたって見送る人が、
「万歳!」を連呼し、「がんばれよ!」と声を掛けるのも当然と思えてくる。
何かあれば「親の死に目には会えぬ」距離であったろう。

そしてまた、「普通522列車『大阪行』」。
ここに描かれている、力強い「機関車」の詩をうたった詩人・中野重治は、高校時代に接した詩人でもある。
自分の昔の事を思い出してちょっと懐かしい気持ちになった。

ISBN:4167519097 文庫 関川 夏央 文芸春秋 2004/02 ¥550

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