旅行者の朝食

2005年6月20日 読書
知ってみると、たくさん本を書いておられるのだ、この方は。
そんなこんなでまとめ買いしたうちの一冊。

同時通訳という職業柄、世界中を飛び回っている著者。
幼い頃から親の仕事の都合で海外生活を経験していた著者。
(しかもマイナーなチェコスロバキア!)
だから、こういう本も生まれてきたのだろう、と思っていたのだが。

要は、食べ物の話。
題名にもなっている「旅行者も朝食」はロシアでの笑い話らしい。
かなり古くからある、普遍的な笑い話なので、その単語を効くだけでロシア人は抱腹絶倒。
その意味するところを解説せよと言っても、「これは外国に生活する人には分からない」のだと。

どんな話か。
(主に)旅行者がクマさんに出会って、
「私は旅行者です」
というと、クマに訂正されてしまう。
「旅行者は私です。アナタは旅行者の朝食です」
って。
…笑い話だけど。
抱腹絶倒ものではあるまい。

実は、その「旅行者の朝食」がポイントだったのだ。
とても食べられないような、まずい缶詰のことで、いつも売れ残っていたにもかかわらず、社会主義計画経済下ではず〜っと生産され続け、90年代の物資不足のときに他の食料とともに姿を消したらしい…永遠に。

これを代表(?)に、ロシアにはいろいろ不思議な食品(特に缶詰)がある、という話が続く

面白かったのがキャビアの話。
ソ連邦時代に乱獲して密漁して数が減ったので、流石にこりゃあまずい、と政府が規制をかけた。
監視もした。
ところが、政府がひっくり返ると今度はまた、儲かる食材と言うことでどんどん密漁され、数が減り、いよいよ輸出禁止になるのでは…?というトコロまで追い込まれているらしい。

黒いキャビアと言われるそのチョウザメの卵。
チョウザメって、サケみたいに生まれた川にも沿って産卵するらしい。
それを捕まえて殴り殺して卵(キャビア)を取るんだが、チョウザメはサケのように、卵を産んだらハイサヨウナラ(昇天)するわけではないのだそうだ。
生きている限り、何度でも川に戻ってきて卵を産み続ける稀有なやつだというのだ。
だとしたら、殺さないで卵だけ取り出せば…毎年キャビアがゲットできるわけじゃあないの!

で、帝王切開という話になり、それを考え実証してみせたものが今では注目を浴びているのだと言う。

それならチョウザメの数も減らないしね。
キャビアも毎年取れるしね。

そういうこすっからいすばらしい実証をして見せたのは、やはり日本人でありました。
さすが!ニッポン!

……ついでに付け加えるならば、米原さん、先日の「丸かじりシリーズ」大絶賛されてました。
「死ぬまで書き続けて!」
だって。

やはりな…。

ISBN:4167671026 文庫 米原 万里 文芸春秋 2004/10 ¥490

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