犬は思考するのか?

たくさんの犬を半野生状態(としか私には思えない)で飼い続けた著者が綴った、彼らの本性と本質。

群で行動する彼ら。
山野で荒野で暮らす狼と、人間社会で、狭い空間を共有しなければならない犬の共通点。

"生きるため"に互いが必要不可欠であり、群の中で闘争をしない狼。

どこかに狼のDNAを引く犬であるがゆえに、群の中に順位をつけずには入られない犬。
それは、"生きるための戦い"がないゆえか。

興味深い事例を挙げて語られるため、飽きが来ない…どころか、犬好きにはもうたまりません♪

人類学者である著者(アメリカ人女性)の、犬まみれの生活がとてもとても羨ましい。
狼の生態観察なんて、人間だれでも願ったって出来るもんじゃないしね。

ムツゴロウさんはべつとして。

シビアなのは、著者の飼う犬二匹が、仔を生んだ時の話である。

野性の狼のように厳しい自然環境のなかでは、順位第一位の雌でなければ仔をもてない。
或いは、厳しい寒さの中ですら、巣穴で出産を出来るのは第一位の雌のみであると言う。

犬もまた然り。

ゆえに、同じ屋根の下で同時期に仔供を生んだ第一の雌は、自分以外の雌が産んだ仔を皆殺しにしようとしたと言う。
殺された仔の母親も、それが順当なこと(=当然のこと)であると考えていたようである。

それが犬の本性であり、本質であるのか。
それを見ていたほかの犬たちは、驚きも慌てもせず、実に冷静に対応したと言うことだ。

それがどういう基準と流れで組み立てられたものであれ、犬もまた、思考をしていることは確実のようである。

単にペットとして犬を見るのではない。
吾らの傍らの、古からの友を、今ひとたび考えなおそうと言う本である。

そういうところも、読みかけていた「デキのいい犬わるい犬」に共通するテーマを見つけて、ちょっと嬉しかった。


ISBN:4794206364 単行本 深町 真理子 草思社 1995/08 ¥1,680

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