欧米の旅 (中)

2005年2月2日 読書
ぶっとい上巻は、昭和13年に日本を出発して、南の海を船で渉り、アラビアからエジプトへ、そして、ギリシア・イタリアへと繋いでいた。

薫り高い葡萄酒。そしてチーズ。
大盛りに盛られたパスタの国。
そして、ミケランジェロやダヴィンチの美が、そちこちに宝石を散りばめたように散在する国。
しかも、陽気なファシストの国でもある。

時代により、人により、状況と立場により、その言葉から受ける印象がこうまで違うかと驚きの連続であった。

この作者の淡々とした書き様が、実に判りやすく、しかもしっかりとした知識に裏打ちされてこその言葉であることに驚く。
そして、戦前に大旅行をしたのこの日本女性の、無邪気さと懸命さと観察力に舌を巻く。
そして、ただ奇抜なだけでなく、このように魅力的な文章で人を惹きつけられればと、心から思う。

彼ら彼女らが面と向かう歴史の大波のことを私は知っている。
だからこそ、その何気ない喜びや思いやりや触れ合いが、とても優しくいとおしく思えてくる。

文章を書く、というのはこういうことなのか。

さて。
この中巻は、英国、オランダ、スイス、スペインへと足を伸ばした著者の旅日記である。
下巻は他の欧羅巴の国々から、いよいよアメリカへ。

戦争がすぐそこに。

ISBN:4003116526 文庫 野上 弥生子 岩波書店 2001/08 ¥693

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