ローマ時代のけちな皇帝・ウエスパシアヌスの治下、密偵ファルコの欠役(?)する、推理小説第9巻。

前回の「オリーブの真実」が出てからそんなに経っていない(様な気がする)ので、出ているとしって吃驚。
(単に、毎回私が気がつくのが遅くて、今回に限り早く気がついただけなのかもしれないが)

ローマ時代といえば、

シーザーとか、
クレオパトラとか、
ベスビオス火山とか、
ブルータスとか、
コロセウムとか、
剣闘士とか、
水道橋とか、

物言わぬ白い彫像ーしかもいかついーのイメージばかりで、身近に迫ってくるものが無い。
人間離れしている。
そう思っていた私に、ローマの、ローマ人の生活をぐんと身近に迫らせた逸品。
それがこの密偵ファルコ・シリーズである。

お金が無くて、安ぶどう酒を煽ったり、公衆浴場で義理の父親と仲良く入浴・マッサージ・ストレッチ運動をしたり、虫の好かない妻の親戚と言下の格闘を繰り広げたり、小遣いばかりむしられる甥・姪から逃れようと謀ったり。

アポロンのような、すらりと長身で均整の取れた完全無欠のローマ人のイメージを吹き払い、そこらの飲んだくれのどうしょうもないオヤジがわんさかいるという、至極まともなローマ人観を育ててもらったものである。

今回、ファルコは今までと違って恋人ではなく、妻と娘をもつ。
そう。家庭を持ったのである。
家庭を持ったからには、責任もある。
それで、幼馴染の悪友(女の問題で奥さんに家を追い出された上に、仕事まで失った)とともに、新しい仕事を始めようとする…。

が。が。が。が。

かわいそうだが、そうそう上手くはいくまい。
そういう星の下に生まれて、でもメ一杯あがいている彼に祝福を。

いや。
へレナにめぐり合って相思相愛になって夫婦になっただけでも、十分ラッキーかな。

ISBN:4334761461 文庫 矢沢 聖子 光文社 2004/10 ¥740

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