WONDER!

2004年10月15日 読書
うっわー!なつかしー!
と言える人は相応の年齢である。(ほっとけって?)

河あきら。

学生時代の、しかも小学校とか中学校とか、そのあたりで夢中になった漫画家だ。

やたらバッドエンディングで、しかも社会派で、泣くに泣けないような悲惨なストーリーがほとんどだった作家でもある。

貧困にあえぐ家庭の、誰も防ぎようが無かった死亡事件だとか、誰も責められないけどもっとどうにかならんかったんかいなー全部世の中が悪いんやー的な叫びが湧いてくる話とか、社会に疑問をもつ若者たちが心の叫びを吐き出す場所が無くて自分たちの存在意義を確かめるために社会を見返すために計画犯罪をやった挙句、ばかげたミスが原因で全員死んじゃって救いも何もなかったやんかーという話とか、架空の物語にしているけれどどう考えても今叉世間で大問題になっている北朝鮮の秘密工作員で実は日本人の血が混じっている主人公が母親の故郷を確かめようと日本に密入国して組織の手のものに追われて最後は生死もわからない状況で終わってひたすらその生還を待ち続けることになる純情な少女の話だとか。(改めて書き連ねると本当に悲惨だなー)

そんな作品の思い出しか蘇らない女流作家なのであった。

その中では「いらかの波」が唯一明るい連載漫画だったことは覚えている。
いらか=甍=屋根瓦。
いらかの波、とは、屋根瓦が波に見える…つまり、家々が並んで立っている様を表したものである。

当時はマンションは無くて、あっても2階建てのアパートぐらい。
それも屋根は瓦だったからね。

学園もので中学生が主人公。
ヒロインのおじいさんが大工だ、という設定で、複雑な家庭事情を背負った主人公が大工に憧れて、大工になるとかならないとか、そういう話だったと覚えている。

だから甍の波。
波のように連なる甍が、その下に住む人間の生活、つまり家庭を象徴していたのだと記憶している。

……それは兎も角。
今の話をしよう。
河あきらの描く人間は、線が神経質でみな細身で、性格もなんとなくカリカリしている感じだった。
豊満な体型の人間、グラマーという言葉で肯定的に認証される人間なんて存在しなかった。
"デブ"と称される以外には。
そういう時代だったのだと思う。
だから、自然漫画の登場人物もそうなった。

今の漫画は、随分絵が変わっている。
これは時代の要求だろうけれど、(受け入れてくれない=本が売れない)それでも時折昔の線を発見することがある。
正直、嬉しい。
理由は無いけれど。
懐かしい、と思うのかな?

さて。
「ワンダー!」は犬の名前。
まあ、色々複雑な関係ではあるけれど、隣どうしで住むことになった母と娘の、娘の家で飼っている、不思議な力を持つ犬の名前である。

犬が不思議な力を発揮するのは、些細なことがきっかけなんだけど、家族にとっては重大な局面でのこと。
それを家族も承知している。
「賢い犬なんだ」
とうのは、ワンダーと言う犬に対して、最大限の評価の言葉ではないと承知しながらも、そういうしかない。
どう見ても雑種の柴犬(!)っぽいワンダーは、人の心を察しもし、慰めもする。
犬って本当に家族だよね〜とそれだけでもほのぼのとしてしまうストーリーなのである。

あ、ちなみに、ワンダーは、やり場の無い悲しみをこみ上げさせるような話ではありませぬ。
家族の絆と個々の人格と、成長する人間の、そしてワンダーとの触れ合いのほのぼの(?)物語。

犬好きの私は、ワンダーだけでも十分なんだが…。

ISBN:4575333042 コミック 河 あきら 双葉社 2004/09/16 ¥610

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