カエサルを撃て

2004年10月7日 読書
重厚なヨーロッパ近世……以前の歴史"すぺくたる"を描く佐藤氏の本。
今度は、ローマ時代、今で言うところのヨーロッパらしいヨーロッパ(フランスとかドイツとかイギリスとか)に群雄割拠していたガリア人の英雄の話である。
群雄割拠…といえば聞こえは良いが、要するに、部族めいめいが自分の主張だけをして、一つにまとまら無かっただけのことである。
そこをローマに突かれて、征服され、重税にあえぐ、というのがこの物語の出だしであり、その圧制を跳ね除けてガリアを統一しようと言う英雄の物語なのである。

髪を短くそろえていたローマ人に対し、ガリアは髪に神が宿るとして、長く伸ばしていた。
ゆえに「長髪族」と呼ぶ。

ガリアは自然とともに生きる。
ガリアは、スコットランドやアイルランドと同じケルト人の民族である。
ハンで押したように抑圧されるが、そのまま黙っていないのがケルト人の生来の特性であるならば、ガリアはまさしくケルトの民だろう。

ドル=多い
イド=知
多くの知=ドルイドとは、彼らケルト人と神を結ぶものであり、一族の教師であり、医者であり、宗教者である。

首長である王も、その威光を背景にできなければ力を得ることは出来ない。
でもって、王といえど唯一至高の存在ではなく、戦さに敗れれば、その責任を取り、天変地異が部族を痛め付ければその責任をとらねばならない。
なかなか厳しい社会の仕組みである。

なにしろ、
「戦で部族の血が流されるのを防ぐために、その分、生贄の血を流す」
とか、
「(彼らの信仰する)神は血を欲している」
とか。

ち、血生臭さすぎる……

その中心にいるのが、ガリアの王・ヴェルチンジェトス、本書の主人公である。
ヴェル=スーパー
チンジェト=ウオーリアー
リクス=キング

やることなすことぶっ飛んでいる主人公。

この主人公を相手に、頭髪の薄さを気にする、ローマ人のくたびれおじさん、ガイウス・ユリウス・カエサルがどのように健闘してくれるのか、それが楽しみである。

ISBN:4122043603 文庫 佐藤 賢一 中央公論新社 2004/05 ¥780

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