子供の心をもっていたい。
純真な気持ちを抱いていたい。

大人になっても。
世の中の酸いも甘いも知ったうえで、感動を忘れない人間でいたい。

そんな気持ちを手助けするような、暖かな短編集であった。

自分のなみだを海の水に流して誤魔化す心もわかる。
だからこそ、海になみだを流すまいとする心もわかる。

でも、幼い頃に、こういう心温まる、感動できる経験をしているからこそ、回帰できる物語なのだ。

そう。
この童話が大人のための童話であり、「大人が涙を流す物語である」といわれるのも、そういう心持を持ったことがある大人たちだからこそ、涙も出るのではないか。
心のどこかに大事にしまいこんである何かに、そっと触れてくるそれに感情が流出してしまうのを止められないのではないか。

だが、子供たちは?
今の子供たちがそういう感情をもてるだろうか?
この物語がどれほど優れていても、そういうことを知らずに育った人間(子供たち)に、優しく温かい心を思い出させることが出来るのだろうか?

だからこそ。
幼いときには、幼いときでなければできない経験を、子供にはさせてやりたい。
ただでさえ、時間というのは逃げてゆくものなのだから。

ISBN:4101331049 文庫 灰谷 健次郎 新潮社 1986/12 ¥378

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