古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家
2004年9月2日 読書
随分昔のこと。
「日本の(昔からの)生活習慣はおかしい。ダメだ」
と知人に言われたことがある。
「じゃぁ何がいいの?」
と詳しく聞いてみれば、要は
「欧米式が一番」
だという。
私も若かった(笑)ので、反発したものだ。
国粋主義では決してないのだけれど、日本のすべてを頭から否定するその単純な考えが気に入らなかった。
「良し悪しではなくて、自分の好き嫌いだけでしょう」
と言い、
「なによりここは日本なんだよ」
と言ってしまった。
言外に、
「"自分が"どうしてもいやなら大好きな欧米で生活すればいい。その習慣で暮らす日本人を"悪い悪い"と、頭から間違っていると、馬鹿にしないで。」
という気持ちが含まれていたのだ。
この本は、英国を良く知る一人の日本人女性が、日本と英国を、特に「住宅とそこに住む人々の」に関する事柄に絞って比較したエッセイである。
英国礼賛・万歳エッセイではないけれど、後書き以外は、「日本はダメ・英国ものが一番」的な記述ばかりなので、いささか「む〜ん」な本である。
英国好きなんだから、しょうがないけどね。
「それのここが好き」
の"ここ"は、
人の好みで、
”嫌い”にもなってしまうので、仕方がない。
ただ、英国人のものの考え方や生活様式には、見習うべき点はとってもたくさんあると思う。
ただし。
英国人が、
「おかしい。日本人はかわいそうだ」
という対象を、日本人のなかには
「だからこその日本。私は好き」
ってこともありうる。
なんでもかんでも「かわいそう」「恵まれていない」は当たらないし、失礼だよなぁとも思う。
同じ作者の「生活大国イギリスの知られざる習慣」がとっても好きで、思わず涙することもあったので、期待が大きすぎたのかもしれない。
それと、テーマを選んでエッセイを書くとき、作者は強調のために、わざと、厳しく・極端・刺激的な意見を選んで並べたのかも知れない。
赤レンガを積んで出来た洋風っぽい高級住宅に、松や楓の日本風庭園は似合わない。
それは醜悪で、和洋のどっちつかずで、すなわち心が落ち着くどころか日々の疲れを癒す大事な空間の役目を果たせるわけがないのだ……と彼女は言う。
そうかぁ?
小さいときから見ていると、そういうのも"日本の住宅"の一面だと納得してしまう。
そも日本は東の端っこに位置する国である。
極東、というぐらいであるから、そりゃもう威張れるぐらい端っこも端っこだ。
そして、長い歴史の中で、次々に興った文明は、ユーラシア大陸を駆け巡り攪拌され隅っこに煮こごりを遺して消滅して行った。
隅っこのひとつである東の端っこの島国には、その文明が、ごっちゃになって、集まって、解けて、固まって…実に奇妙なモノを作り上げてしまった。
日本の文化なんて所詮はそうして生まれたものだ。
赤レンガを積んで出来た洋風っぽい高級住宅に、松や楓の日本風庭園も、千年もたてば「なつかしい古きよき日本の美」になっているかもしれない。
人が何処に癒しを感じるかは、千差万別で、小さな島の東洋人ですらどこに幸せを感じるかは、それぞれ違っていても当たり前である。
第一、私はウオッシュレットのないトイレは嫌だ。
腸の病気をもっている身には、これがあるとないとでは生活に天と地ほどに格差が出る。
極楽と地獄、と言って良いほどに。
自動ドアも、病後の、力のない弱った身体には大変助かった。
不便=すばらしい
のではなく、
勿論、
便利=悪
等でもなく、
好き⇒(すばらしい)⇒心が豊か
であるのが一番自然なのではなかろうか。
この自然は、NATUREの自然ではなく、自分が"自然である"ということだ、勿論。
ホラ。
「自然体」…ってむかしから日本語にあるじゃないか。
隣の芝生は青い。
そんな言葉をふと思い出した。
ISBN:4101481210 文庫 井形 慶子 新潮社 2004/05 ¥500
「日本の(昔からの)生活習慣はおかしい。ダメだ」
と知人に言われたことがある。
「じゃぁ何がいいの?」
と詳しく聞いてみれば、要は
「欧米式が一番」
だという。
私も若かった(笑)ので、反発したものだ。
国粋主義では決してないのだけれど、日本のすべてを頭から否定するその単純な考えが気に入らなかった。
「良し悪しではなくて、自分の好き嫌いだけでしょう」
と言い、
「なによりここは日本なんだよ」
と言ってしまった。
言外に、
「"自分が"どうしてもいやなら大好きな欧米で生活すればいい。その習慣で暮らす日本人を"悪い悪い"と、頭から間違っていると、馬鹿にしないで。」
という気持ちが含まれていたのだ。
この本は、英国を良く知る一人の日本人女性が、日本と英国を、特に「住宅とそこに住む人々の」に関する事柄に絞って比較したエッセイである。
英国礼賛・万歳エッセイではないけれど、後書き以外は、「日本はダメ・英国ものが一番」的な記述ばかりなので、いささか「む〜ん」な本である。
英国好きなんだから、しょうがないけどね。
「それのここが好き」
の"ここ"は、
人の好みで、
”嫌い”にもなってしまうので、仕方がない。
ただ、英国人のものの考え方や生活様式には、見習うべき点はとってもたくさんあると思う。
ただし。
英国人が、
「おかしい。日本人はかわいそうだ」
という対象を、日本人のなかには
「だからこその日本。私は好き」
ってこともありうる。
なんでもかんでも「かわいそう」「恵まれていない」は当たらないし、失礼だよなぁとも思う。
同じ作者の「生活大国イギリスの知られざる習慣」がとっても好きで、思わず涙することもあったので、期待が大きすぎたのかもしれない。
それと、テーマを選んでエッセイを書くとき、作者は強調のために、わざと、厳しく・極端・刺激的な意見を選んで並べたのかも知れない。
赤レンガを積んで出来た洋風っぽい高級住宅に、松や楓の日本風庭園は似合わない。
それは醜悪で、和洋のどっちつかずで、すなわち心が落ち着くどころか日々の疲れを癒す大事な空間の役目を果たせるわけがないのだ……と彼女は言う。
そうかぁ?
小さいときから見ていると、そういうのも"日本の住宅"の一面だと納得してしまう。
そも日本は東の端っこに位置する国である。
極東、というぐらいであるから、そりゃもう威張れるぐらい端っこも端っこだ。
そして、長い歴史の中で、次々に興った文明は、ユーラシア大陸を駆け巡り攪拌され隅っこに煮こごりを遺して消滅して行った。
隅っこのひとつである東の端っこの島国には、その文明が、ごっちゃになって、集まって、解けて、固まって…実に奇妙なモノを作り上げてしまった。
日本の文化なんて所詮はそうして生まれたものだ。
赤レンガを積んで出来た洋風っぽい高級住宅に、松や楓の日本風庭園も、千年もたてば「なつかしい古きよき日本の美」になっているかもしれない。
人が何処に癒しを感じるかは、千差万別で、小さな島の東洋人ですらどこに幸せを感じるかは、それぞれ違っていても当たり前である。
第一、私はウオッシュレットのないトイレは嫌だ。
腸の病気をもっている身には、これがあるとないとでは生活に天と地ほどに格差が出る。
極楽と地獄、と言って良いほどに。
自動ドアも、病後の、力のない弱った身体には大変助かった。
不便=すばらしい
のではなく、
勿論、
便利=悪
等でもなく、
好き⇒(すばらしい)⇒心が豊か
であるのが一番自然なのではなかろうか。
この自然は、NATUREの自然ではなく、自分が"自然である"ということだ、勿論。
ホラ。
「自然体」…ってむかしから日本語にあるじゃないか。
隣の芝生は青い。
そんな言葉をふと思い出した。
ISBN:4101481210 文庫 井形 慶子 新潮社 2004/05 ¥500
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