だから行ってはいけなかったのに…。
本屋へ行くなり衝動買いをしてしまった。

京都の話。
それも、花街の話。
意外に京都人でも知らないことのほうが多い。

そりゃそーだろー。
特殊な世界だもの。
分からないからこそ神秘的で"秘密の花園"で、美しく妖しく興味深くもなるというものだ。

それと。
京都人なのにこんなことも知らんのかー?
といわれるのが怖い。
怖いので、先に勉強しておこうと言う小心者なのである。

著者は、なんと大正時代に舞妓になったというつわもの。
今でも現役の(鑑札を返していない)芸妓さんである。
まるで"ビクトリー号"のような……。(たとえが悪い?)

おばあさんはご維新の前から芸妓をしていたというから…すごいわ。
しかし祇園ではわりと普通だったらしい。
うん。祇園ならね、と、素人の私でも頷けるところが凄い。

花街だ、祇園だといえば、ドラマや小説で「折檻」だの「いじめ」だの、随分と酷い世界のように描かれていたらしい。
だが、この本の二人の著者は「決してそんなことはなかった」と笑い飛ばし、「小さいうちは合宿か修学旅行みたいに思えた」と楽しさを語っておられる。
はたから、また現代から見ると"厳しい"を通り越して"酷い"と思えたことも、当時にあっては"普通のしつけ"だったのだろう。

そら、悪いことや、あんまり鈍なことをしたら怒られますけど、それは普通のお家かておんなじとちがいますか


はい。その通りです。

全編、読みやすい京都弁で書かれているので、非常に読みやすい、と思うのは京都人だけだろうが、京都の話し言葉に触れるいい機会でも有るので、チャレンジするのも面白かろう。
読めないほどべったりの京都弁ではないので、その点は安心してもよい。

そして。
大正期に始まって、戦前・戦中・戦後と、物不足の、また写真が庶民的ではなかった時代において、彼女らの写真の多く残っていること。
話に対応した写真がちゃんと用意できているのがすばらしい。
舞妓以前のおちょぼと呼ばれる頃の写真の、なんとも可愛らしいこと!

これもまた、舞妓・芸妓という華やかな、夢を売る職業であったが故の幸いであろう。

今の舞妓・芸妓とはまるで違う世界であるようだが、其れもまた歴史。
生きた歴史である。
特に、京都に遊びに来て、祇園界隈をぶらぶらしようというならば、一読をお薦めする。

ISBN:4569662250 文庫 森田 繁子 PHP研究所 2004/07 ¥540

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