パイド・パイパー − 自由への越境
2004年7月2日 読書
ハーメルンの笛吹き。
そういえば判りやすいのだが、題名の「パイド・パイパー」はその笛吹きのこと。
…なんて、後書きを読むまで知らなかったし、この作家が19世紀末生まれであり、まさしくこの小説の時代を生きた実業家であり、この作品も1942年にはアメリカで映画化され、日本でも30年以上前に角川から発刊されていた…とはまったく気がつきもしなかった。
不覚。
欧米では、アガサ・クリスティなどと並べられる著名作家であるのだと。
内容は、第二次世界大戦が勃発したフランス。
スタートはスイス国境近くのジュラ県。
70才になる英国人・もと弁護士の老人が、英国へ避難させてくれと親から託された子供をつれて〜それも途中でどんどん子供たちは増殖するが如くに増え〜ひたすら英国に向けて、故郷へ向けて進もう(逃げよう)とする、そんな物語である。
汽車は動かない、パリはドイツの手に陥落する、バスは爆撃を受けて立ち往生、連れて行かざるを得ない子供たちは進むごとに増え、ドイツ軍の制圧下の町を通過等々…次から次へと起こるのは自分たちにとっては不利なことばかり。
それらを乗り越えて、いかにして脱出するかという、なかなか手に汗握るストーリーになっている。
それは叉、華々しい戦争ドラマの主人公ではなく、か弱い老人と子供という、ごくごく一般的な私たちのレベルの視線で考えられる物語であった。
一言で言えば、こういう状況で子供は足手まとい以外の何者でもない。
しかし、老人は、長い人生で身に着けた"忍耐"ひらたすら"忍耐"でもって、自らの心臓病をごまかしつつ(としか思えない)子供たちを誤魔化しつつ(あやしつつ)一歩一歩と前進するのであった。
決して見捨てはしないのだ。
誰ひとりも。
危険と、つかの間の休息。
派手なやり取りは無いけれど、読ませる本である。
この危機をどのように切り抜けるのか、運命の女神がどちらを向いているのか、少しでもこちらを向かせるために、わずかな可能性があれば決して諦めない気持ち。
老人はそうして進み続ける。
が、果たして同じ状況で、我々はこの老人の如く振舞えるだろうか?
はなはだ疑問である。
戦争においては、子供は勿論、年よりも何も出来ない。
出る幕ではない。
足手まといであり、最初に切り捨てられるものでもある。
だからこそ、この70歳の、心臓病を患う老人が子供たちを最後まで離さなかったこと、見捨てなかったことは、彼が勇敢なる若い戦士たちになんら劣らないヒーローであることの証でもある。
ISBN:448861602X 文庫 池 央耿 東京創元社 2002/02/22 ¥735
そういえば判りやすいのだが、題名の「パイド・パイパー」はその笛吹きのこと。
…なんて、後書きを読むまで知らなかったし、この作家が19世紀末生まれであり、まさしくこの小説の時代を生きた実業家であり、この作品も1942年にはアメリカで映画化され、日本でも30年以上前に角川から発刊されていた…とはまったく気がつきもしなかった。
不覚。
欧米では、アガサ・クリスティなどと並べられる著名作家であるのだと。
内容は、第二次世界大戦が勃発したフランス。
スタートはスイス国境近くのジュラ県。
70才になる英国人・もと弁護士の老人が、英国へ避難させてくれと親から託された子供をつれて〜それも途中でどんどん子供たちは増殖するが如くに増え〜ひたすら英国に向けて、故郷へ向けて進もう(逃げよう)とする、そんな物語である。
汽車は動かない、パリはドイツの手に陥落する、バスは爆撃を受けて立ち往生、連れて行かざるを得ない子供たちは進むごとに増え、ドイツ軍の制圧下の町を通過等々…次から次へと起こるのは自分たちにとっては不利なことばかり。
それらを乗り越えて、いかにして脱出するかという、なかなか手に汗握るストーリーになっている。
それは叉、華々しい戦争ドラマの主人公ではなく、か弱い老人と子供という、ごくごく一般的な私たちのレベルの視線で考えられる物語であった。
一言で言えば、こういう状況で子供は足手まとい以外の何者でもない。
しかし、老人は、長い人生で身に着けた"忍耐"ひらたすら"忍耐"でもって、自らの心臓病をごまかしつつ(としか思えない)子供たちを誤魔化しつつ(あやしつつ)一歩一歩と前進するのであった。
決して見捨てはしないのだ。
誰ひとりも。
危険と、つかの間の休息。
派手なやり取りは無いけれど、読ませる本である。
この危機をどのように切り抜けるのか、運命の女神がどちらを向いているのか、少しでもこちらを向かせるために、わずかな可能性があれば決して諦めない気持ち。
老人はそうして進み続ける。
が、果たして同じ状況で、我々はこの老人の如く振舞えるだろうか?
はなはだ疑問である。
戦争においては、子供は勿論、年よりも何も出来ない。
出る幕ではない。
足手まといであり、最初に切り捨てられるものでもある。
だからこそ、この70歳の、心臓病を患う老人が子供たちを最後まで離さなかったこと、見捨てなかったことは、彼が勇敢なる若い戦士たちになんら劣らないヒーローであることの証でもある。
ISBN:448861602X 文庫 池 央耿 東京創元社 2002/02/22 ¥735
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