物語の端々に、今昔物語からの引用が多々見られる。
「昔話」の面白味を土台に、夢枕獏の陰陽師の物語が展開する…わけで、非常にとっつきやすい小説となっている。
短編なのも良い。
だらだらと大河ドラマ風にやられても間延びするばかりで面白さは激減するだろうから。
平安時代の京の都で活躍する安倍晴明の物語であるから、舞台は京。
メインは京。
それも今と比較すると、市内中心部のみ。
ぐっと小規模に縮小される。
現状ですら小さな田舎であるのに。
もっと小さい…。
それと。
現在の御所は昔の御所とは位置が違う。
昔はもっと西よりで、京都市の地図を見ていただければよく分かると思うが、都のど真ん中を走る朱雀大路…これが随分西よりにあることに気づくと思う。
もともとはど真ん中だったのよ。
そういえば、龍が棲む神泉園も西よりに…と思わないでもないハズだ。
余談だけれど、私の母校(公立高校)は、そのど真ん中の大路の名前を冠していた。
他の四神、玄武・白虎・青龍の名前を冠した高校が存在しないことを考えると、なんで朱雀だけ…と思ったりもするのだが、まあ、雅やかでそれはそれでよいかもしれないと今頃になって思っている。
当時は嫌だった。何が嫌って、読みづらい・発音しづらい・聞き取りにくい。
この名前、高校名としては「すじゃく」ではなく、「すざく」って読むんである。
だが、世間一般には「すじゃく」なんで「すざく」というと「はぁ?」とか言われたものである。
でもって、漢字にすると、「なんて読むんですか?」と。
すざく・しゅざく・しゅじゃく……好き勝手読むよな、皆。
陰陽師ばやりの昨今では、こんな漢字ぐらい読めて当然で、あたふたする人もいるまいが、当時は、簡単な癖に使いづらい漢字であった。
当時の流行り、というか我々高校生の憧れは、紫野(むらさきの)、とか、鴨沂(おうき)という名前であった。(どちらも公立高校)
きっと画数の多い漢字のほうが、賢そうに思えたのであろう。
京の町を闊歩する陰陽師(晴明)と武士貴族(博雅)。
怪かしが、あちらの屋敷、こちらの荒れ家、向こうの辻、そこの橋、と現れては消え消えては現れる…百鬼夜行の京の都はもう慣れたが、具体的地名が出てくるたびに、現状の風景を思い浮かべてしまうのが困り者。
京都の地名は交差する通り名が二つ出てくれば分かるので、今のどこら辺に当たるかは、瞬時に分かってしまう。
ああ、あのコンビニの処か、この百鬼夜行が出る場所は。
おお、通いのレストランのある場所やん、この大入道が歩いてるん。
一条戻り橋…ああ、あのコンクリートで固められた堀川の。そういや、こないだおばちゃんが柴犬の散歩をしていたな。
…うちの斜めむかいやん、これ、この妖怪屋敷…。
知りすぎるということは、ムードぶち壊しなんである。
ISBN:4167528053 文庫 夢枕 獏 文芸春秋 2000/11 ¥500
「昔話」の面白味を土台に、夢枕獏の陰陽師の物語が展開する…わけで、非常にとっつきやすい小説となっている。
短編なのも良い。
だらだらと大河ドラマ風にやられても間延びするばかりで面白さは激減するだろうから。
平安時代の京の都で活躍する安倍晴明の物語であるから、舞台は京。
メインは京。
それも今と比較すると、市内中心部のみ。
ぐっと小規模に縮小される。
現状ですら小さな田舎であるのに。
もっと小さい…。
それと。
現在の御所は昔の御所とは位置が違う。
昔はもっと西よりで、京都市の地図を見ていただければよく分かると思うが、都のど真ん中を走る朱雀大路…これが随分西よりにあることに気づくと思う。
もともとはど真ん中だったのよ。
そういえば、龍が棲む神泉園も西よりに…と思わないでもないハズだ。
余談だけれど、私の母校(公立高校)は、そのど真ん中の大路の名前を冠していた。
他の四神、玄武・白虎・青龍の名前を冠した高校が存在しないことを考えると、なんで朱雀だけ…と思ったりもするのだが、まあ、雅やかでそれはそれでよいかもしれないと今頃になって思っている。
当時は嫌だった。何が嫌って、読みづらい・発音しづらい・聞き取りにくい。
この名前、高校名としては「すじゃく」ではなく、「すざく」って読むんである。
だが、世間一般には「すじゃく」なんで「すざく」というと「はぁ?」とか言われたものである。
でもって、漢字にすると、「なんて読むんですか?」と。
すざく・しゅざく・しゅじゃく……好き勝手読むよな、皆。
陰陽師ばやりの昨今では、こんな漢字ぐらい読めて当然で、あたふたする人もいるまいが、当時は、簡単な癖に使いづらい漢字であった。
当時の流行り、というか我々高校生の憧れは、紫野(むらさきの)、とか、鴨沂(おうき)という名前であった。(どちらも公立高校)
きっと画数の多い漢字のほうが、賢そうに思えたのであろう。
京の町を闊歩する陰陽師(晴明)と武士貴族(博雅)。
怪かしが、あちらの屋敷、こちらの荒れ家、向こうの辻、そこの橋、と現れては消え消えては現れる…百鬼夜行の京の都はもう慣れたが、具体的地名が出てくるたびに、現状の風景を思い浮かべてしまうのが困り者。
京都の地名は交差する通り名が二つ出てくれば分かるので、今のどこら辺に当たるかは、瞬時に分かってしまう。
ああ、あのコンビニの処か、この百鬼夜行が出る場所は。
おお、通いのレストランのある場所やん、この大入道が歩いてるん。
一条戻り橋…ああ、あのコンクリートで固められた堀川の。そういや、こないだおばちゃんが柴犬の散歩をしていたな。
…うちの斜めむかいやん、これ、この妖怪屋敷…。
知りすぎるということは、ムードぶち壊しなんである。
ISBN:4167528053 文庫 夢枕 獏 文芸春秋 2000/11 ¥500
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