面白い
&ちょっと珍しい小説だった。

地球外生命体と、その狂ったコピー、そしてとある高校に通う、10代の若者たちのスリリングな物語である。

殺伐としたシーンもあったり人死もあったりと結構ショッキングでは有るのだが、今時はこういう描写は珍しくもない。
どうかすると麻痺した感すらある。
グロさで言うならば、その手を売り物にしている小説に比べれば、はるかにお上品の部類であろうか。
エグさ、グロさばかりを強調されると、逆にストーリーが、その作品自体がお粗末に思えてきたりするので、この小説なんかは程よい距離を保っているのかもしれない…と思う。

そして単なるサスペンス(?)ではなく、意外性が散りばめられていていること、狭い高校という舞台の中で人間関係が器用に設定されている。
つまり、視点の転換が激しすぎて車酔いするほどでもなく、定点化しすぎてマンネリ化するでもなく、程よいリズムで心地よい。

そういったいろいろなことがミックスして、他の小説とは一線を画している。
その辺が、ちょっと珍しい小説だったと思う。

それにしても。
活躍するのは矢張り「女の子」のほうなんだね…。
男はついてくるばかり、というかついていくので精一杯。
たった一人、ぎゃ〜と叫んで女の子をほっぽって、自分だけ逃げ出した…と思っていたら、武器を手に取って返した男の子がいて、逆にそれが「珍しい」と思ってしまった。
世も末か?

否。今はそういう時代か。

しかし、この舞台に設定された高校。
ウチの会社やマンションよりセキュリティチェック厳しいね…。
私なんざ、休講と聞くたびに、家にとって帰ったものだったが。
(おまけに「1時限から休講なら、前日に言っとけばいいのに」とぶつぶつと見当違いの文句を言いながらだ)

でも、これは、現代社会の治安状況を考えれば、ある意味うらやましいかも。

ISBN:4840208042 文庫 上遠野 浩平 メディアワークス 1998/02 ¥578

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