「殺人者の陳列棚」読了。
犯人は意外や意外…というか、その頃にはすっかり忘れていた御仁だった。

話としては面白いし、登場人物も魅力的なのだが、犠牲になった方のご冥福を思わず祈らずにはいられないような死に方(殺され方)で随分気分が悪い思いをした小説だった。
が、この作者の著作をざっと見ると、そういう素養は多々あるらしい。
医学的な知識が豊富な方なのであろう。

いいな、と思ったくだりは、例えば始皇帝が求めていた物を目の前にしたとき、人間はどうするべきかと言う問いに、

『それが誰にでも利用できる安価なものなら、世界は人口増加で滅びるだろう。かぎられた人にしか手にできないものであれば、暴動と戦争で世界は滅びるだろう。』
『賢人が100人いれば愚者は1000人いるのだ。例えばアインシュタインやコペルニクスが200年生き延びるとしても、同じ200年を1000人の愚者が行き延びるほうが可能性は高いのだから(世界は滅びる)』
(言い換えれば、アインシュタインが200年生きて人類に有用な頭脳の使い方をしたとしても、同じ年月を100人のヒトラーが生きたとしたら、人類はどうなってしまうだろうということ)

だから、「消去せよ」というのが答えであった。こうもストレートに回答されてしまうとは。
ちょっと珍しい展開かな、と思ってしまった。

半永久的な寿命はいまだに憧れの的なのかもしれない。手塚治虫の名著「ブラックジャック」では発達した医学がソレを可能にしつつあった。が、やがて本人は「安らぎ」を、つまり「死」を求めるようになっていた。
何が人にとって幸福なのかは、その人によって一つ一つ違うだろう。

大金持ちでしたいことし放題ならば、そりゃぁ長生きしたいかもね、。
女性が「いつまでも美しく若くありたい」と言う努力も、そこから派生する感情かもしれない。
ま、永遠に美しく生きたいと本気で思っている人なんてそうざらにはいないと思うが。できるかぎり老化を遅らせたいというのは、もっと単純な感情だと思うし。
「永遠に美しく」…どっかの映画じゃないけど。怖くもあり、笑いもあり。

今日からは、叉、宮城谷氏の「香乱記」に入る。
新聞切り抜きなので、外出のお供にはできない。ちょっと寂しいけど、友人に思い切り無理をさせている(日々切り抜き作業をしてくれている)ので申し訳ないと思う読本である。

でも無理を言ってしまうほど、楽しみで楽しみで…。

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